ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇の映画専門家レビュー一覧

ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇

海の奴隷としてタイの漁船で働かされている人々の姿と、彼らを救おうと奮闘するタイ人女性パティマ・タンプチャヤクルの活動を追うドキュメンタリー。人身売買業者によって貧困国から集められ、売り飛ばされた人々の救出に密着し、シーフード産業の闇に迫る。第43回トロント国際映画祭上映作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    男たちの顔がヤバい。何年も漁船の中で奴隷として働かされるとこんな顔になるんだ。7年とか10年とか20年とか、時間の長さに驚く。もう故郷には帰れない。今いる場所で奥さんも子供もいる。投げやりのような彼らの生気のない顔を見つめ続ける。カメラを向けられ両親に何か一言と言われ、涙を流しながら語る姿が、いつまでも記憶に残る。彼らを救おうとする女の人がいい。揺るがない信念みたいなものが伝わってくる。どこかにこういう人がいると思うとホッとする。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    これが本当に現代でも起こっているのかと驚愕する。人権などそもそも存在していないかのように「海の奴隷」になってしまった人々がいる。この作品は元奴隷となってしまったひとによる証言から作られたイメージ映像も多いだろう。本当に漁船の中を映すことは不可能に近い。労働における権利活動家として活躍するパティマさんの言葉や表情からは、ただただこの恐ろしい現状に辛い気持ちでいることがこれでもかと伝わってくる。この映画は始まりに過ぎない。知ったうえで、どうするか。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    パティマ?タンプチャヤクルとその活動に敬意を。22歳で癌になり、生死のあわいをさまよった彼女は、闘病を終えると「他人のために生きよう」と心に誓ったという。2004年に移民の子どもたちの教育支援を目的に夫とNPOを設立。労働者の人権擁護へと活動は次第に広がった。本作は、職探しの過程でだまされたり、あるいは誘拐されて、違法な漁業の奴隷労働に従事させられる船乗りたちの命を救い、彼らの人権を保護する活動をより多くの人に伝えるためのPR映画である。

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