カモン カモンの映画専門家レビュー一覧

カモン カモン

「ジョーカー」のホアキン・フェニックス主演、「20センチュリー・ウーマン」のマイク・ミルズ監督によるA24作品。ラジオジャーナリストのジョニーは、妹から頼まれ9歳の甥ジェシーの面倒を数日間みることに。それは彼にとって、驚きに満ちた体験となってゆく。共演は、本作で第75回英国アカデミー賞 助演男優賞ノミネートの新星ウディ・ノーマン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    エンドロールに重なる子供たちの声は、多様性に配慮しているようで望まれるべき未来と「子供」をイコールで結ぼうとする発想については一切疑わない、自らの経験や実感を重視する監督の姿勢を良くも悪くも象徴する演出で蛇足。だが、それぞれの形で容易に相手に心を開くことのできない頑なさと不器用さを持つ主人公二人の演技はいずれも印象的。とりわけ、自らの弱さや脆さをさらけ出すことでこそ相手に寄り添おうとする、終盤の森の場面でのホアキンは新境地開拓と言って良い名演。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    分かり合えないことがある。愛しているのに別れてしまうこともある。それは仕方のないことだが、それでも時としてやりきれない思いを抱く。そんな悩ましさまで含めた人生のあり方を大人も子供も聞き分けが良すぎるほどに理解しているのがマイク・ミルズの描く世界だ。上の世代の頭ごなしの視線でも下の世代の野放図な視線でもなく、両世代の理解者であるような、実に物分かりの良いマイク・ミルズの視線は、しかしその物分かりの良さゆえに逆に説教じみたものも感じてしまう。

  • 文筆業

    八幡橙

    ひっそりと、静かに降る霧雨を思わせる映画だ。自身の子育ての体験に端を発しているのだろうが、子育てと無縁であっても誰しも思い当たる「人」と「人」の心が交わることの迷いや困難や複雑さを、繊細にじっとマイク・ミルズは見つめる。大人であっても戸惑う、誰かに向かって一歩踏み込む瞬間の空気や湿度、温度、そして音が、モノクロの映像の内に閉じ込められ、映画全体が去りゆく時を惜しみながら、それを未来に繋ぐべく記録せんとする真摯な試みに思えた。そう、先へ先へ、と。

1 - 3件表示/全3件