フェルナンド・ボテロ 豊満な人生の映画専門家レビュー一覧

フェルナンド・ボテロ 豊満な人生

2022年で生誕90年を迎える南米コロンビア出身の美術家フェルナンド・ボテロの素顔と独創的で多幸感あふれる作品の数々に迫るドキュメンタリー。ボテロ作品の特徴は人や動物、果物など、あらゆる形がふくらんでいること。そのボリュームある対象に込められた官能やユーモア、アイロニーとは。ボテロ独特の「魔法」をヨーロッパ、NY、中国、コロンビアで長年にわたって撮影されてきた映像と、ボテロ本人やファミリー、歴史家、キュレーターの証言で読み解いていく。
  • 映画評論家

    上島春彦

    ボテロは豊満なモナリザの絵で有名な画家。今夏、日本でも展覧会が開かれる。パロディというよりも割と本気でそういう画風を確立したようだ。それなりの哲学に則って描いているというのは分かったものの、自分の絵を自分と家族(と画商)が、要するに関係者が褒めてどうするの。亡くなった途端に市場価格が下落する典型的なパターンである。有名になる前の絵の方が繊細なタッチで優れているし、才能を感じさせる。この映画の記録的意義はそっちかも。ボテロって名前には愛嬌あり。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    フェルナンド・ボテロについて概観を見渡せる正攻法なドキュメンタリー映画。必ずしも称賛ばかりではなかったとされる彼の作風に対して、映画には批判者が一名投入されているが、ボテロ自身の血縁者が製作に携わっていることもあり、基本的にはボテロを讃える内容になっているため、一名のみの批判者の存在が中立性を担保するものではなく、かえって悪目立ちさせてしまっているようにも思われる。「なぜふくよかさにこだわっていたか」という問いに肉薄していく過程は興味深かった。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    一体何度生き直しているのだろうと思うほど波瀾万丈の人生を送る存命のアーティスト、フェルナンド・ボテロの果てしない欲望と衰えることのない情熱が導く逸話を追っているだけでも飽きるわけがない。その強固な信念と絶えまない実作によって、古臭いと思われていた作風を現代美術のコンテクストにすくい上げられた過程は感動的だ。それにしても、製作主体であるとはいえ、一族の当主を人柄どころか作品批評まで、これだけ微に入り細に入り語れるボテロ一家には驚嘆。

1 - 3件表示/全3件