やがて海へと届くの映画専門家レビュー一覧

やがて海へと届く

「四月の永い夢」がモスクワ国際映画祭で二冠を達成した中川龍太郎が、彩瀬まるの同名小説を映画化。親友が一人旅に出たまま戻らなくなって5年。大切な思い出を抱えて、愛する友の姿を追って旅に出る真奈。その旅の終わりに待ち受けるものとは……。息ができる場所を探し続けてきた真奈に岸井ゆきの、明るく自由奔放なすみれを浜辺美波、すみれのかつての恋人を杉野遥亮が演じたほか、中崎敏、鶴田真由、中嶋朋子、新谷ゆづみ、光石研などのベテランが集結した。詩人としても活躍する中川監督が瑞々しい感性で編み上げた喪失と再生の物語。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    原作ものなので脚本に起因するのではないかもしれないが、凡庸な台詞が登場人物たちの魅力を削いでいる。真面目に生きている普通の人々が発する言葉にこそ、面白味を見つける視点が欲しい。また、中盤以降で明らかにされる震災絡みの設定が、その凡庸さのエクスキューズになっているのにも辟易。東宝芸能の秘蔵っ子、浜辺美波が本作のような独立系作品のサブキャストで出演するのはいい傾向。主演級の役者が若いうちから主役にこだわらず出演作を選べる環境が日本でも根付くといい。

  • 映画評論家

    北川れい子

    このところ、若い女性同士の親密な関係を描いた作品が目立つ。むろん親密なと言っても、友情に近い心情的な関係から、直接的な愛の行為に至る関係までさまざまだが「あのこは貴族」「君は永遠にそいつらより若い」「偶然と想像」、これはアクション系だか「ベイビーわるきゅーれ」など、女性同士の関係が物語の軸になっていた。本作の岸井ゆきのと浜辺美波も十分親密な関係になるのだが、話の着地は意外にも東日本大震災で、誤解を恐れずに言えば、後だしジャンケンの印象も。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    岸井ゆきの氏、浜辺美波氏、杉野遥亮氏らのような涼やかな姿のキャストを得、明媚な風光を画面に湛えていても、なにか愚直で整理のつかない映画だと思った。それはまったく非難ではないし否定的なことでなくむしろ好感で、隙あれば余裕あればこういう映画が作られ続けてほしい感につながる。それはそもそも原作にある、説明しがたく割り切れないものを語りたい語らねばならない、不在の者を都合よく扱わない、ということに由来するのかもしれない。また変格恋愛映画にも見えた。

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