チェルノブイリ1986の映画専門家レビュー一覧

チェルノブイリ1986

1986年のチェルノブイリ原発爆発事故に直面した消防士の苦闘と避難民の混乱を描いたドラマ。元恋人のオリガと10年ぶりに再会し、2人で新たな人生を歩むことを願う若い消防士のアレクセイ。だがその時、地元のチェルノブイリ原発で爆発事故が発生する。「ハードコア」のダニーラ・コズロフスキーが監督&主演を兼任。
  • 映画評論家

    上島春彦

    チェルノブイリがウクライナにある、という事実が改めて忌まわしさを加速。地名の読み方の変更も噂され、そのうち旧チェルノブイリと呼ばれるようになるのかな。原発の詳細は事実、ただしキャラクターはフィクション、という作りを評価するか否か、ここが鍵。チームによるミッション遂行・挫折・再試行という映画的趣向があくまで企画の半分になっちゃうわけだ。もっとも問題の事故現場の迫力自体は凄いことになっている。少年が撮影してしまったフィルムが活用されないのは残念。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    日本公開決定後にロシアによるウクライナ侵攻が始まった政治状況を加味すると、より別の様相を呈することになるであろう本作。「チェルノブイリ原発事故」を描く映画にあって、別れた恋人同士とその息子を巡るメロドラマが過多な点にはおそらく批判が起こりそうなのは想像に容易いが、そうした娯楽的枠組みを借用しながら政府への批判的視点を忍ばせているのも十分伝わってくる。事故に関わった幾人かの人間の感情にじっくりと寄り添っていく手法は、新たな切り口を提示してくれる。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    「ハードコア」などの挑戦的な表現を用いる作品に出演し、俳優としても名が知れた監督による本作はステディ・カムを多用し、劇映画らしい詩情、映画らしさを追求した一作といえる。しかし、同じ歴史的事件を描いた映像作品で、テレビドラマでありながらも限りなく映画/歴史的な何かに漸近していたHBOの『チェルノブイリ』と比べると、寂しい出来になっている。粗雑な脚本とマッチョな英雄譚は「チョルノービリ」を盾にする国家による国威発揚映画にすら見えてしまうほどだ。

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