連鎖(2020)の映画専門家レビュー一覧

連鎖(2020)

韓国の田舎町で周りの人々と協力しながら不自由なく暮らしていた知的障がいの青年が、ある家出少女との友情がきっかけで、かつての信頼と友人を失ってしまう。狭いコミュニティの中で疑惑の目を向けられた彼が選ぶ未来とは……。8 歳の心を持つ 30 代の青年ソック役に、ドラマ『ミセン-未生-』(14)や『賢い医師生活』(20)の実力派俳優キム・デミョン。ソックを犯罪者にしてしまうキム先生には、ドラマ『ホテリアー』(01)『オンエアー』(08)などのソン・ユナが、「ウエディングドレス」以来10年ぶりに映画に復帰した。ソックと仲良くなる少女ウンジ役には映画初出演のチョン・チェウン、信頼を集める村の神父役を「ゴールデンスランバー」のキム・ウィソンが演じた。監督・脚本は本作で初長篇デビューを果たしたキム・ジョンシク。プロデューサーは是枝裕和の韓国映画「ベイビー・ブローカー」にも名を連ねるソン・デチャン。第23回釜山国際映画祭で上映。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    障害者の性、幼児虐待といった気軽に扱うのは難しいが重要な主題を宗教や司法との関係まで交えて扱いつつ、観客に不快感を与えるかギリギリの地点まで踏み込む形で巧みにメロドラマに落とし込んでいる。お節介とケア、友情と憐憫のはざまで揺れ動く人間関係の細部に関する描写はよく練られており、主演二人も難しい役を好演している。物語の締めくくり方には個人的に物足りなさを感じもしたが、観る者にさまざまな思考を強いるという意味で、まさに一見の価値はあるだろう。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    知的な障害を持つ大柄でピュアな大人の男と、家族との間に背負いきれないほどの問題を抱える少女との交流は、その造形だけで拭いきれない悪い意味での既視感がある。周囲の偏見や無理解によって二人の間が引き裂かれるたびに、その場面の悲痛さを強く訴えかけようとするかのように多用されるスローモーションの演出や苦しみ嘆く顔のアップは、無闇に彼らとの距離を近くし映画を重くする。しかし、本作に必要なのは彼らとの適切な距離感であり、軽やかなユーモアのような気がする。

  • 文筆業

    八幡橙

    知的に障害を持つ男が性的暴行の嫌疑をかけられるが、真相は誰にも伝えられない――実話を基にした「トガニ」とは全く逆のベクトルから成る物語。英題である「水切り」、水面を跳ねる石の波紋が象徴するように、一つの誤解、もしくは偏見が、事実と異なる軌道を生み出し、これまで味方だった人々が“正義”の名の下、一斉に牙を?く。怖ろしい負の連鎖だ。結末は賛否あろうが、SNSなどで安易に人を追い込める今、キム・デミョンが最後に見せた顔、その残像が問うものの意義を思う。

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