ヴィム・ヴェンダース プロデュース ブルーノート・ストーリーの映画専門家レビュー一覧

ヴィム・ヴェンダース プロデュース ブルーノート・ストーリー

    「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」のヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を務めたジャズの音楽ドキュメンタリー。第二次世界大戦中、二人のユダヤ系ドイツ人の青年がニューヨークでジャズと出会い、1939年にジャズ専門レーベル「ブルーノート」を立ち上げたその伝説に迫る。二人の名前は「ライオンと狼(ウルフ)」こと、アルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフ。迫害から逃れるためにアメリカへ渡った二人は、音楽への愛情とミュージシャンへの尊敬のみでジャズの歴史を変えた。独自のレコーディングスタイルとサウンド形成の裏側を、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ソニー・ロリンズ、クインシー・ジョーンズなど、名だたるジャズミュージシャンたちと、アルフレッドの元妻でありジャズクラブ「ヴィレッジヴァンガード」のオーナー、故ロレイン・ゴードンをはじめとする周囲の人々の証言で紐解いていく。監督はドイツで数多くのドキュメンタリーを手掛けるエリック・フリードラー。
    • 米文学・文化研究

      冨塚亮平

      ユダヤ系移民のブルーノート創設者たちとアフリカ系のアーティストたちが、痛ましい迫害や差別の経験を共有していたからこそ、互いの質の異なる苦しみに共感し、単なる仕事を超えた関係性を育み、名盤の数々を世に送り出すことができたという事実は、今こそ改めて強調されるべきだろう。登場する曲の素晴らしさはもちろん、前半を中心に回想場面で用いられる質が高いとは言い難いCGは別として、フランシスの写真やジャケットデザインの秘話が登場する後半は視覚的にも見どころ十分。

    • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

      降矢聡

      インタビュイーの幾人かが言うように、ナチスのユダヤ人迫害と当時の音楽界の黒人ミュージシャンたちへの差別が果たして同様のものだったかはわからないが、ドイツからアメリカへ逃れてきたユダヤ人の二人がブルーノートというレーベルを新しいホームとして作り上げたのだということがよくわかる。文字通り住居を録音スタジオにする挿話や食事に関する小話が実に魅力的に語られるのもそのためだろう。そう考えるとヴェンダースのプロデュース作というのもなるほど腑に落ちる。

    • 文筆業

      八幡橙

      青い夜と、酒と、紫の煙と。旧き時代の熱や空気を、味わい深いCGアニメとジャズの名曲、当時を知る人々の証言によってまざまざと蘇らせる。ナチの脅威から逃れ、アメリカに渡ったユダヤ系ドイツ人の“ライオンとウルフ”が、公民権運動前のNYにおける人種差別に自身の境遇を重ねるさま、天職とも呼ぶべきジャズに注いだただならぬ思い、数々の運命的な出会いが実現した瞬発的かつ即興的な“シュイング”の力――。全篇を貫く愛ある視点が五感を刺激し、あの頃へと誘う名品。

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