永遠の1分。の映画専門家レビュー一覧

永遠の1分。

「カメラを止めるな!」の上田慎一郎が脚本を手掛け、同作の撮影を担当した曽根剛が監督を務めたドラマ。米国から来日した映像ディレクター、スティーブは、被災地を訪れた際、目にした演劇の舞台をきっかけに、コメディ映画を作ることを考えるが……。出演は「コンフィデンスマンJP」のマイケル・キダ、ヒップホップ・シーンでカリスマ的存在感を誇るラッパーのAwich。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    アメリカ人が3・11を題材にコメディを撮ろうとする。チャレンジな企画だと思う。しかし残念ながら、劇中映画がコメディでもなければ、本篇もコメディではない。そこはちゃんと笑わせた方が。被災地に東北と字幕が出る。東京は関東ではなく東京なのに。被災地もいろいろ。津波被害が被災地であるのと同じように原発被害もまた被災地。なのにそっちはネグレクト。タイトルバックにも福島はない。安全圏で作った感は拭えない。それでも被災者の話を聞く主人公の表情には心打たれた。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    「カメラを止めるな!」同様に映画内映画を巧みに織り込み、随所に笑いの要素をちりばめながら、脚本の上田慎一郎の真摯な資質がよく表れている。東日本大震災という重い題材に、「部外者」はどうかかわることができるのか、深い悲しみを抱えた人々、困難に直面した人々に「笑い」は力を与えられるか。そういうことをまじめに考えながら、この題材に向き合う自分たちの姿を、登場人物を通してさらけ出す。であるがゆえに、この映画は笑えない。映画内映画に笑えないように。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    これも“震災映画”の一本だが、最も無難に思えるドキュメンタリーを蹴り、リスキーなコメディを撮るべく3・11に向き合う米国人監督が主人公という点は目新しい。しかし、震災を機に日米に引き裂かれた夫婦の話に移ると、笑いも消失。紆余曲折を経て監督が自費で完成させた設定の映画も、ユルい出来映えが想像され、エモーショナルな歌の力に完敗しているのも歯がゆい。映画づくりを題材にするなら腹を括り、部外者にしかできない表現とは何かを追究すべきだったと思うのだが。

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