猫は逃げたの映画専門家レビュー一覧

猫は逃げた

「愛がなんだ」「街の上で」の今泉力哉と「性の劇薬」「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫が互いの脚本を演出しあう“L/R15(エルアールジュウゴ)”企画の一本。飼い猫をどちらが引き取るかで揉める離婚直前の夫婦とそれぞれの浮気相手たちが繰り広げる恋愛狂騒劇。主人公の漫画家の町田亜子をモデル・アーティストとして活躍する山本奈衣瑠、亜子の夫で週刊誌記者の広重に「ケンとカズ」以来、快進撃が続く毎熊克哉。広重の同僚で浮気相手の真実子に「愛のくだらない」の新星・手島実優。亜子の相手で担当編集者の松山に「ミュジコフィリア」の井之脇海など、旬の俳優が共演している。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    演出と脚本が逆の「愛なのに」が滅法面白かったので大いに期待して臨んだのだが、ユーモアの手数やここぞの爆発力においても、登場人物をやっかむ気持ち(ラブコメにおいて実は重要なポイント)の喚起力においても、画面の人物配置と編集が生み出すテンポ感においても、ちょっと差が出てしまったような。それをそのまま城定脚本と今泉演出の特質とするのは早計だろうが、本作に関しては役者のアドリブ待ちなのか、長回しフィックスの多用が物語への没入感を阻害しているように感じた。

  • 映画評論家

    北川れい子

    今泉脚本×城定監督の「愛なのに」はすこぶる小気味いい作品だったが、城定脚本×今泉監督のこちらは、どの人物も自己チューなくせに決断力がなく、喫茶店の無駄話並みのどうでもいい会話と無意味なエピソードがだらだら、うだうだ、正直、逃げ出したくなった。猫も呆れる愚かで不器用な4人の男女の話という触れ込みだが、演技を感じさせない俳優たちのナリフリ台詞が、こちらにはより嘘っぽく思え、彼らが誰とどうなろうが、知ったこっちゃなし。そもそもキャラが退屈すぎる。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    今泉力哉氏と城定秀夫氏のコラボには実に納得させられるものがある。どちらも脚本が書ける監督で、色恋沙汰の露骨な部分やフィジカルな面を描くことを好むタイプで、そのふたりが脚本監督を交換するように「愛なのに」と「猫は逃げた」の二作製作、連続公開。この企画においてジャンル映画誕生のようなことが起きている。率直、滑稽な恋愛を顕揚するような映画の復興。そこが楽しい。ヒロイン山本奈衣瑠氏、オリジナルな美女。あとあの柄が良すぎる猫……。それらも観て楽しい。

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