ガンパウダー・ミルクシェイクの映画専門家レビュー一覧

ガンパウダー・ミルクシェイク

ウーマン・パワーとオタク・パワーが奇跡の合体。渦巻く硝煙の中に芽生えた女たちの連帯と共闘を、CG に頼らない生身の格闘、壮烈なカー・チェイス、迫真のガン・ファイトの連続で描いたシスター・ハードボイルド・アクション。主人公のサム役は、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでサイボーグ戦闘員ネビュラを演じたカレン・ギラン。180cmという長身と抜群の身体能力を活かしたダイナミックなアクションを繰り広げる。少女エミリー役は「アバター2」に出演しているクロエ・コールマン。監督・脚本は「オオカミは嘘をつく」(2013)が、クエンティン・タランティーノから「本年度最高傑作」と絶賛されたイスラエル出身のナヴォット・パプシャド。古今東西のアクションを観てきた映画オタクのパプシャドが、セルジオ・レオーネ、サム・ペキンパー、ジャッキー・チェン、ジョン・ウーからタランティーノに至るまで、巨匠たちが描いてきた名場面の数々を自在にアレンジ。「女たちの挽歌」ともいうべき本作を作り上げた。
  • 映画評論家

    上島春彦

    タイトルがポエティックなのはお手柄だ。今やサブというよりメイン・ジャンルとなった観のある「女殺し屋」映画。殺しのテクニックも様々な先行作品へのオマージュっぽくて面白い。「必殺」シリーズの中条きよしを思わせるものまである。しかし諸事情はあるにせよ、いたいけな子供に「契約(仕事)で行う連続殺人は正当化される」なんて嫌な言い訳をして欲しくない。ところでオマージュといえば、ブライアン・デ・パルマ的な遠近同時に焦点を合わせる画面が効果的かつカッコいい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    男性をひとまとめにして悪に見立てたわかりやすい二項対立には賛否があるだろうが、予想以上に良質なフェミニズムでかためられたアクション映画。ヴァージニア・ウルフをはじめとしたフェミニスト作家たちの本を戦闘道具として導入している小ネタも洒落がきいており、両手の麻痺したカレン・ギランが小さい女の子と手分けして運転する迫真のカーアクション・シーンなどは十分に魅せてくれる。ただし、既存のアクション映画の枠組みに留まらずに飛び越えるものがもう少し欲しかった。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    こういうルックを見るとどうしてもエドガー・ライトの諸作を思い出してしまうのだが、本作はエドガー・ライトの作品ほどのユーモアのキレや脚本の構成力があるわけではない。ただし、本作の演出家は、ともするとカット割りとCG頼みの演出になるエドガー・ライトとは違い、どこまでも俳優の芝居を信じようとしているように見える。その結果、アクションのキレは大きく削がれてしまっているものの、使い古されてしなびているはずの類型的な物語には不思議と血が通っていた。

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