ツユクサの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
市井の人々の地に足のついた日常を描いた作品という点では「今はちょっと、ついてないだけ」とも共通しているが、こちらは小林聡美がこれまで演じてきたスローライフ的キャラクター、及びそれを支持してきた観客の「その後」という企画意図が明確。平山秀幸の演出、松重豊、江口のりこら共演陣もさすがの安定感。もっとも、物語のナレーターも務めている小学生の息子のサブストーリーはただでさえスローな物語を停滞させるばかり。特に子役同士のキスシーンはモラル的にも不要だ。
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映画評論家
北川れい子
この作品をハグしたい。いや、この作品にハグされたい。海に面したロケ地の空気感。嘘のないキャラクター。気取らない会話。いくつもの小さなエピソードと小気味いいオチ。ここは人の噂をおかずにしてご飯を2膳もお代わりする土地、という台詞があるが、どうしてどうして、どの人物も透明でサバサバしていて、喪失感や痛みを抱えていても笑う余裕がある。宇宙から隕石を降らせて始まる安倍照雄のオリジナル脚本を、魅力度満点の作品に仕上げた平山監督に最敬礼。俳優陣がまた最高。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
オールド世代にはまず「地獄の警備員」だった松重豊氏が孤独にグルメし始めたときには驚いたが、いいな、と思い、本作ではちょっと痩せのサイクルに入っていることにまたショックを受けたが、やはり観ていくうちに、いい枯れかたと思う。自分が若いうちは年配の男女にはもう恋などないし、それは妙に老けただけの美しくない色恋があるように思えたりするものだが、個々人の主観や恋ごころは傍目より常に若い。小林聡美氏の不滅の清純さと相まって、美しいカップルが顕された。
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