ダイナソーJr. フリークシーンの映画専門家レビュー一覧

ダイナソーJr. フリークシーン

切なく哀愁を帯びたメロディを殺伐とした轟音で包み込む、アメリカン・オルタナティブ・ロックの核をなしたバンド、ダイナソーJr.初の公認ドキュメンタリー。オリジナル・メンバーである J・マスキス(G./Vo.)、ルー・バーロウ(B.)、マーフ(D.)の三人の関係性にフォーカスしながら貴重な過去のフッテージを交えてバンドの歴史を描く。J・マスキスとは義理の親族にあたる、ベルリン在住の監督フィリップ・ロッケンハイムが、三人それぞれの正直な証言を引き出し、2005 年以降再集結した現在までを、愛情あふれる視点でまとめあげた。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    メンバーの出会いからバンド結成、解散と再結成を経た現在までを順を追って辿っていくきわめてシンプルな構成は安直にも映るが、わかりやすく活動の全貌を伝えられる効果はあるだろう。じっさい、私自身にとってもこれまであまり触れていなかった初期作を改めて聴く契機に。また「ドラムを叩くようにギターを弾く」というJの言葉は、単なるアンプやエフェクターの物量には還元されない、彼ら独自の歪みに満ちた音響の本質を捉えるための一つのヒントになりそう。ぜひ劇場の爆音で!

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    MTVにより音楽の商業主義化が進み、ノーと言うことに意義がある時代に誰よりもでかいノイズを繰り出していたダイナソーJr.の結成から現在までがバランス良く語られる。そこには貴重な映像もあるだろうし、時代や人間関係の軋轢なども語られるが、しかし特別にドラマチックな展開はなにもない。むしろドラマを排するように淡々と音楽を続け、感情も出さずにインタビューに答えるバンドリーダーJの姿が、バランスの取れた映画構成のなかでオルタナティブに際立っている。

  • 文筆業

    八幡橙

    巨大すぎたと言われた音は、三人それぞれの内に向かう性格ゆえか。楽器を、音楽を介してしかまともに意思疎通を図れなかった彼らが歩んだ10代から50代までの凸凹道。妙に引き込まれたのは、ジャスト同世代だから?それとも三者三様のキャラクターの持つ力?いわゆる「40歳問題」にも通じる、サブカル世代が老いてゆくことのあれこれがここに。途中スピリチュアルに走るJから漏れる人間味にも苦笑。PVを監督したマット・ディロンの登場に、映画「シングルス」(92)を思い出す。

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