魂のまなざしの映画専門家レビュー一覧

魂のまなざし

フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックの1915年から1923年の時代を描く伝記映画。忘れられた画家であったヘレンは、ある画商が彼女の作品を発見したことで全てが一変。そして、15歳年下の青年ロイターとの出会いが大きな転機をもたらす。出演は、「ファブリックの女王」のラウラ・ビルン、「ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!」のヨハンネス・ホロパイネン。監督は、「ストーカー」のアンティ・ヨキネン。
  • 映画評論家

    上島春彦

    撮影がずば抜けている。監督とカメラマンは明らかにヴィルヘルム・ハンマースホイの窓際の女性像とか、ジョルジュ・ド・ラトゥールのマグダラのマリアを参照しつつ画面を構成しており、見応えたっぷり。どうせなら主人公画家の絵のスタイルの変遷も網羅的に見たかった。ただし物語の時空間は彼女の第二の青春みたいな8年間中心に絞られるので、そういった美術史ドキュメンタリー風にはする気もなかっただろう。問題は彼女の生涯の友人となる男が大したキャラクターじゃないことか。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    本作で白眉なのは、随所に差し込まれる無人の風景ショットではないか。そこではスタティックな画が志向され、映画と絵画という決定的に異なる芸術形式が限りなく溶け合う。戦争や貧困を描くのは「女流画家」に相応わしくないのでは、と問われるヘレン・シャルフベックは「レッテルを貼られたくない」とひとりの画家であることを主張する。であるならば、そこを描きたい作品とはいえど彼女が女性である側面を強調するようなラブロマンスにやや比重が置かれすぎているような気もする。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    絵画と現実の違いとはなんだろう。恐らく違いはないのだろう。本作の主人公である画家・シャルフベックが展示会で自らの作品に当たる光に執拗にこだわっている様子を見ていてそんなことを思った。彼女を演じるラウラ・ビルンの顔に落ちる陰翳は絵画のような深みをたたえた現実であり、絵画をそのまま再現したいくつかのカットは現実のような絵画である。その往復は、そりゃ伝記映画よりも彼女自身の作品の方が良いに決まっているでしょうよという声を打ち消せるほどに刺激的だ。

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