シラノの映画専門家レビュー一覧

シラノ

1897年のフランス初演以来、日本を含む世界各国で演劇・ミュージカル・映画になったエドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を、「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライト監督が壮大なスケールで改めて構築したロマンティック・ミュージカル。純愛三角関係の物語が時代を超えてよみがえる。主人公の剣豪・詩人のシラノを演じるのは、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』でエミー賞やゴールデングローブ賞などに輝いたピーター・ディンクレイジ。シラノの親友であり思い人である女性、ロクサーヌを「マグニフィセント・セブン」のヘイリー・ベネット、ロクサーヌが片思いをする口下手なクリスチャンをケルヴィン・ハリソン・Jr.が務める。グラミー賞受賞ロックバンド「ザ・ナショナル」が制作したオリジナル楽曲「Someone to say」とともに、躍動感あふれるミュージカルシーンと圧巻の映像美が展開する。
  • 映画評論家

    上島春彦

    試写で二年前に「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」を見たばかり。で、やっと公開か、なんて勘違い。もちろん別物の新作だ。驚きの設定チェンジは最近好評だった舞台版から来たもの。主演コンビと作者も続投。究極の純愛物語とはいえ、ロクサーヌを巡る恋愛は三人がそれぞれ二人と自身を欺いている感覚が濃厚。それ故、愛の言葉も「実質を超える過剰こそ愛だ」という倒錯になる。レトリックこそ愛なのよ、という。設定が変わったことでそこが強調され分かりやすくなった。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    知性のあるヒロインに片想いする二人と手紙の代筆という物語構造は「ハーフ・オブ・イット」と同型をなぞり、込められたメッセージは時代の差異を超えて共有される。ジョー・ライトは「プライドと偏見」や「つぐない」を筆頭に時代劇のイメージが強いが「路上のソリスト」等を観てもジャンル問わず演出力が堅実にあるのは伝わるものの、そつなくこなすためか印象が薄い。「シラノ」もワンショットずつ絵画を描くように撮られており、そんな生真面目さを感じる仕上がりになっている。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    ミュージカル映画が流行している一方で、歌が残らない作品が多いのも事実。そんな中、ミュージカルというからには当然良い歌を聴かせてくれるよなという観客の期待を裏切ることがない本作は貴重な作品と言える。歌唱も良いがザ・ナショナルのメンバーによる曲も良い。ジョー・ライトの演出もやや息切れする終盤まではファースト・シーンから冴えており、名匠S・マクガーヴェイによるドガの絵画のようなルックは豊かな美術や衣裳を乱反射させ見事な幻想世界を現前させている。

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