マヤの秘密の映画専門家レビュー一覧

マヤの秘密

「ミレニアム」シリーズのノオミ・ラパスが主演・製作総指揮を兼任したサスペンス。1950年代。街で男の指笛を聞いたマヤは、かつての悪夢が蘇る。ナチスの軍人だったその男から戦時中暴行を受けたマヤは、復讐心から男を誘拐し、自宅の地下室に監禁するが……。共演は「THE INFORMER/三秒間の死角」のジョエル・キナマン、「夜に生きる」のクリス・メッシーナ。監督は「ベツレヘム 哀しみの凶弾」のユヴァル・アドラー。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    緊迫感がすごい。主人公の女の人の取り憑かれたような顔が怖い。狂ってる。善良そうな男を監禁し暴行を加える。この怒りがどこへ向かうのか。どうなってしまうのか。全然予測できない。夫は妻の怒りが理解できず、どん引きのまま事件に付き合う。夫が男を助けるかと思いきや、事は簡単に運ばない。狂った妻と冷静な夫。二人の設定が物語を盛り上げている。何度も見つかりそうになるサスペンスも効いている。ラストはちょっと引っかかった。この女の人に何か救いがほしかった。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    思い出したくもない嫌な記憶に苦しめられ続ける辛さ。主に被害者の傷跡に焦点は当てているが、物語が進むにつれて、加害者の苦しみも浮かび上がってくる。さらには、苦しむ人の側にいる辛さも描かれ、どうしようもなく先の見えない閉塞感が漂う。どうにもならない力に引き込まれ、驚くほど残酷になってしまう人間の姿を、包み隠さずにこの作品は描こうと挑戦してくる。どう転んでも後味が良くなることはないのだ。こんなふうに「希望がない」ことを真正面から描く勇気に拍手したい。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    ほとんど戯曲の映画化を思わせる、脚本の映画。「私たちが秘密にしていること」という原題は脚本の構造そのものを指し、いくつもの「秘密」を中心に作劇が組み立てられ、秘密という空白を埋めるのが物語の目的である。嘘をついているのはどちらなのかを解明していく過程で、それぞれの嘘と真実が明らかになっていく。フラッシュバックなどの映画的な意匠はそれだけに煩わしく感じさせるが、最後、掘られていた穴を男が埋めるイメージで終わるのはあまりに愚直な分、好感が持てる。

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