なん・なんだの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
ここ4、5年、特にアメリカで数え切れないほど作られてきた、そして最近ではさすがに食傷気味な、トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)をテーマとした作品がようやく日本でも増えてきた。主演の下元史朗のキャリアや、烏丸せつこ演じる妻の生い立ちもふまえるなら、もしかしたらその射程には日本のピンク映画史も入っているのかもしれない。プロットやその着地にはそれなりに納得できるものの、紋切り型で時代遅れな台詞が、役者たちの繊細な表現を台無しにしている。
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映画評論家
北川れい子
何なんだ、この映画? シニア世代の夫が、妻に長年裏切られていたと知り、妻の過去を探りだそうとして、逆に打ちのめされ。演じている下元史朗は知る人ぞ知るキャリアの長い俳優だが、そもそもこの映画の製作意図がわからない。シニア世代向きの作品のつもりなら、シニアはこういう映画は観ないだろし、というよりシニアが観たがるような話ではない。妻の真実など気にも止めなかった夫の後悔話としても描写は歯切れが悪く、また妻も何だかなぁ。ごめん。他に言うことなし。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
自分がほぼ団塊世代(ちょい後発)の親の子としてほぼ団塊ジュニア世代くらいなので非常にいろいろ考えさせられるものを示された。政治体験と姿勢よりも気になったのはフェミニズム的視座の欠如とか男女間格差のほうだった。そこを男が楽をしてきたのが最終的にはつらいことになる、と思う。下元氏と佐野氏の共演はピンク映画的には座頭市と用心棒が戦うくらいの感じのはずだが、いや、そういう映画ではなかったですね。団地の遠景空撮画面がある時代の墓標のように見えた。
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