スターフィッシュの映画専門家レビュー一覧

スターフィッシュ

謎のカセットテープをめぐるSFスリラー。オーブリーは亡くなったばかりの親友の家で、『このミックステープが世界を救う』と書かれたカセットを見つける。巨大な生物が支配する世界で、彼女は謎の信号の断片が入ったテープを次々と発見していくが、真相の追跡が妨げられる。出演は、「ハロウィン」のヴァージニア・ガードナー。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田『未体験ゾーンの映画たち2022』で上映。
  • 映画評論家

    上島春彦

    パーソナルな視点に立った世界終末SF。この発想は面白い。雪に閉ざされた都会を侵入者に怯えながら歩き回る主人公の姿は「町中でのサヴァイヴァル」という主題に連携する。雲を衝く巨大モンスターや虚弱なヴェノムみたいなエイリアン、ヴィジュアルは最上だ。ところが細部のアイデアに乏しい。かつて『ミステリー・ゾーン』が30分で語った物語に100分かけてる印象。友人の彼氏と浮気し、その友人が死んで喪失感に囚われ、といった物語の背景がほとんど効いていないのが惜しい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    大切な存在を失った少女の心象風景を抽象的な映像でコラージュして象った世界観は、たとえばギジェルモ・デル・トロの「パンズ・ラビリンス」や、リサ・ブリュールマンの「ブルー・マインド」といった作品の要素が乱反射している。実写映画のなかに挿入されるアニメーション映像も多くの場合浮いた印象を受けてしまいがちだが、この映画では効果的。監督がクリエイティビティを遺憾無く発揮して感覚的に紡がれた物語なだけに、論理性と辻褄を求める観客には向いていないかもしれない。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    「クワイエットプレイス」のような異星人との闘いを想像していたら、現代的な日記映画であった。いや、語りやショットも著しく統覚を欠いており、ほぼ散り散りなので、映像インスタレーションの一種と呼んでもいいのかもしれない。そんな断片的な映像群にどの時間軸から届いているのかわからない亡霊たちの声が響く世界は、サントラのバンドたちがよく鳴っていた時代に某予言通り滅亡してしまったもうひとつの世界のようで、あり得た何かを垣間見てしまったという奇妙な余韻が残る。

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