ダムネーション 天罰の映画専門家レビュー一覧

ダムネーション 天罰

『サタンタンゴ』原作者であり、本作以降すべての作品で共同作業を行う作家クラスナホルカイ・ラースローがはじめて脚本を手がけた。さらに「秋の暦」から音楽を手がけるヴィーグ・ミハーイが本作にも携わり、”タル・ベーラ スタイル”が確立された記念碑的作品。罪に絡めとられていく人々の姿を「映画史上最も素晴らしいモノクロームショット」(Village Voice)で捉えている。巨匠タル・ベーラ監督が初期に手がけた日本初公開となる3作品を4Kデジタル・レストア版で、2022年1月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて上映。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    主人公がカッコ悪くて、女の旦那の方がカッコよくて、変なキャスティングと思った。男が歌手の奥さんに惚れて、その旦那との三角関係。この手の話、安っぽいはずなんだけど、やたらと重々しい。男はいつも雨に濡れていて、惨め。頭は禿げてるし、尾行ばっかりしてる。情けない。野良犬はそこらをうろうろしてる。セリフはわかるようでいて、よくわからない。哲学っぽい。何が起こるかわからなくて、ドキドキしてずっと見ていた。モノクロのわびしい風景が記憶に残る。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    話し声も、歌も、雨音も、赤ん坊の泣き声も、ガラスが割れる音も、犬が吠える声も耳の奥に突き刺さってくる。そして永遠に終わらないタンゴが繰り返される。人々の顔はいつも挑発的で、悲しげで、不機嫌だ。どこで何を間違えたのだろう、男も女も自分の人生が間違ってしまったことはわかるのに、まるでどこか他人事のようでもある。ちょっとしたシーンで釘付けになる。例えば、ドアを閉める行為ひとつをとっても。永遠を終わらせようともがく男の姿がとても悲しい余韻を残す。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    タル・ベーラの試みを一言で要約するなら、〈画面外〉に存在論的な根拠を与えることだ。カメラが長回しでゆっくり動く。空間と時間の連続性を保ったまま、フレーミングが変わり、そのつど恐ろしいほどの精度で見事な画面が生み出されていくが、その実フレームの内側だけで完結しているショットは一つもない。カメラの運動と画面の変奏は、むしろフレーム内の充実がいかにフレーム外に負っているかを示すためにある。驚嘆するほかない緻密な音響設計が必要とされるのはそれゆえだ。

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