ナイトメア・アリーの映画専門家レビュー一覧

ナイトメア・アリー

「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督が豪華キャストを迎え、ノアール小説『ナイトメア・アリー 悪夢小路』を映画化。読心術を身につけトップ興行師に躍り出たスタンだったが、精神科医のリリスと組んだことから闇に飲み込まれていく。野心溢れるスタンを「アリー/ スター誕生」のブラッドリー・クーパーが、謎めいた精神科医リリスを「アビエイター」「ブルージャスミン」でオスカーを獲得したケイト・ブランシェットが演じるほか、ギレルモ・デル・トロ作品常連のリチャード・ジェンキンスらオールスターキャストが集結し、ショービジネス界の光と闇を描いたサスペンス・スリラー。第94回アカデミー賞で作品賞・撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞にノミネートされた。
  • 映画評論家

    上島春彦

    昔、渋谷で「悪魔の往く町」という白黒フィルム・ノワールを見たが、これも同じ話。そっちは前後半で(物語が)くっきり二分する印象が強く、なじめなかったのだが、デル・トロ監督はその分裂状態を気にいったようだ。前半カーニバル篇、後半詐欺師篇って感じか。画面としてはカントリーサイドとシティスケープと規定してもいい。「フリークス」の鶏女が出てきそうなサーカス小屋のヴィジュアルも驚きだが、後半のアールデコ美術がまた凄い。でもあの程度で人は騙されるかな。疑問だ。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    序盤からあまりにもブラッドリー・クーパーを艶かしく這うカメラが奇妙に思えたが、結末に近づくにつれその演出のすべてが伏線になっていたことが明らかになり唸った。正しくて退屈だったこの作家の過去作「シェイプ・オブ・ウォーター」よりも、よほどおかしみがあって良かった。ケイト・ブランシェットの強烈なイメージも十全にこの世界観のなかで発揮されている。ただこの長尺にあって物語の展開が鈍重すぎるように感じもしたので、もっとところどころ軽快さが欲しかった。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    細部まで完璧で、これぞ暗黒映画といういかがわしさがたまらない前半が終わり、映画がミニマルな心理劇へと転じるあたりからどうもギアが上がってこない。ケイト・ブランシェットのファム・ファタールは巧みすぎて、巧くはないブラッドリー・クーパーを食ってしまっているし、デル・トロは相変わらず愛を描けない。何よりも、省略の美学がものをいうはずのノワールにおいて、省略すべき演出が省略されず、省略すべきでない演出が省略されてしまっているというのはいかがなものか。

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