信虎の映画専門家レビュー一覧

信虎

武田信玄の父であり、甲府を開府した信虎の晩年を描く本格的時代劇。信玄によって追放され、京で足利将軍の奉公衆となった信虎。追放より30年の時が流れ、信玄が危篤に陥ったことを知った齢80の「虎」は、武田家存続のため最後の知略を巡らせる――。信虎を演じるのは36年ぶりの主演作となる寺田農。信虎の娘で15歳のお直に谷村美月。榎木孝明、永島敏行、渡辺裕之らベテラン俳優に加え、矢野聖人、荒井敦史、石垣佑磨の若手俳優も参加。また、武田家の映画「影武者」で織田信長を演じた隆大介の遺作となった。監督は「デスノート」の金子修介、音楽に「影武者」などの池辺晋一郎、武田家考証に武田氏研究の第一人者・平山優を迎えたほか、撮影の上野彰吾、衣裳の宮本まさ江、特殊メイク・スーパーバイザーの江川悦子、美術装飾の籠尾和人、VFXスーパーバイザーのオダイッセイなど、日本映画の最高峰のスタッフが結集。武田信玄生誕500年の記念イヤーである2021年日本公開。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    作品のトーン&マナーがあまりにもエクストリームなので面食らった。生まれてこの方NHKの大河ドラマというものを1秒も見たことがないのでよくわからないのだが、そういう特有の番組視聴者へのターゲットマーケティング作品なのだろうか。だとしても、解説字幕の多用、話者を追うだけの退屈なカメラの切り返しと弛緩したズーム、場面転換の合いの手のように入る冗談のような劇伴の使い方、学芸会のような子役の演技など、少なくとも「現在の映画」としての評価は不可能かと。

  • 映画評論家

    北川れい子

    武士たちを前に侍らせた信虎の詮議、戦略、脅しに願望が、武士たちの顔ぶれを変えながら、何度も何度も繰り返えされ、信虎が発する武士の名も誰が誰やら無数に及び、信虎情報にまったく疎いこちらは、ただ画面を眺めるのみ。見て聴いて体感する“新”時代劇、とは本作のキャッチコピーだが、体感するほどこの映画に近付けないのがもどかしい。とはいえ信虎の野心と焦燥感は、演じる寺田農の全身からひしひし。美術や小道具も厚みがあり、ベテラン俳優陣も風格がある。でも私には?

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    相当面白いことが設定とシナリオの上にあるだけに、画面がもう少し陰影に富みグラマラスでゴージャスならばよかったに、と思う。可能性はあった。撮影というより美術の予算、映画の規模がもっと欲しかった。何が面白かったか。ハードなスタントアクションとは違う戦略による殺陣場面。永島敏行の二役。谷村美月が最後に晴れ晴れとして再登場する爽快さ。寺田農の信虎の自己催眠が生死を越えて機能する(E・A・ポー『ヴァルドマアル氏の病症の真相』を思わせる)という奇想。

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