カウンセラーの映画専門家レビュー一覧

カウンセラー

「RIP」にて福井映画祭審査員特別賞受賞、「SHARING」などの脚本に参加した酒井善三監督による自主制作の短編心理サスペンス。カウンセラーの倉田が産休前最後の相談を終えたところに、予約なく来たアケミ。話を聞くことにすると、彼女は謎めいた話を始める。「RIP」に出演した鈴木睦海が妊娠中の心理カウンセラー倉田真美を、「夏の娘たち ~ひめごと~」の西山真来が奇妙な悩みを話す吉高アケミを演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    現代のホラー映画において最も重要なのはナラティブの刷新であり、そのためには過去のホラー映画及びサスペンス映画の真摯な研究が不可欠なわけだが、本作における狭い空間でのショットの切り替えや、回想シーンに入るときの話者のギミック演出の目新しさには大いに興奮させられた。劇伴や効果音の使い方にも非凡なセンスがうかがえる。登場人物が全員大人のホラー映画というのも思えばなかなか貴重。フォーマットや尺の長短にかかわらず、この調子で作品を量産し続けてほしい。

  • 映画評論家

    北川れい子

    コンパクトな設定と人物によるドッペルゲンガー現象仕立てのサイコホラーで、小粒なりに脚本は面白い。ただどうしても気になったのは、明日から産休に入るという心理カウンセラーが若すぎること。私にはハタチそこそこにしか見えないのだ。そんな彼女の前に現れる40歳前後の奇妙な女。その女が語る過去の性的な体験は、若いカウンセラーの未来の陰画か、或いは不倫のツケである出産への恐怖心からくる妄想なのか。いずれにしてもカウンセラーの若さが折角の脚本を弱めている。

  • 映画文筆系フリーライター退役映写技師

    千浦僚

    蛾と、ふえるわかめが良い芝居をしている。そういう映画では人間も通常の人間以外のものになろうとしており、鈴木睦海氏、西山真来氏はそこに達する。撮影は「冷血」におけるコンラッド・ホールの域を狙っていてほとんどそれを果たしている。語りの組み方、ソニマージュ的な画と音の重ねと繋ぎは映画とはここまで凝ったことが出来る、すべきだと主張し、それを観る楽しさを拓く。映画美学校が正しく、スクール(流派)を形成している。講師陣の探求と蓄積は引き継がれている。

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