JOINTの映画専門家レビュー一覧

JOINT

個人情報流出、名簿売買、特殊詐欺など、現在進行形の“裏社会”で起こる犯罪をドキュメントタッチで描くクライム・ムービー。ヤクザでもカタギでもないグレーゾーンを生きる半グレの男が真っ当に生きたいと願いながらも、白と黒の世界を行き来する姿を描く。東京大学建築学科在籍中からMVなどの映像を手掛けていた小島央大の長編監督デビュー作。現代の東京で身近に起きている詐欺犯罪の闇を描くにあたり、徹底したリサーチを実施。主演の石神を演じた山本一賢をはじめ演技経験より「個性」や「ルック」を重視したキャスティングを敢行。圧倒的なリアリティとアートフィルムとしての作家性が融合した新感覚のジャパニーズ・ノワールを生み出した。2021年の大阪アジアン映画祭、ニューヨーク・アジアン映画祭で上映。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    アウトローではない自分がここで発する「リアリティ」という言葉にどれだけ意味があるかわからないが、シノギの詳細から登場人物たちの顔つきやエスニシティまで、現代のヤクザ&半グレ映画としての「リアリティ」に驚かされた。暴力描写や性的描写に頼らないストイックな構成、逆光を多用した硬質な画作りもジャンル映画としては画期的。人物背景を大胆に省略してスピーディーに展開していく手法は、まるでソダーバーグ作品のよう。監督、脚本、主演、すべて新人。これは事件だ。

  • 映画評論家

    北川れい子

    目のつけどころは面白い。ヤクザでも堅気でもない。一匹狼でもなく誰かとつるんで行動しているわけでもない。ヒーローにもアンチヒーローにもなれない中途半端なワルの半グレ。正直、あまり共感が持てない主人公の話だが、ぶっつけ本番的な粗っぽい演出と、彼が関わるどのキャラも演技を超えたリアリティーがあるのには感心する。名簿ビジネスなど、個人情報の売り買い。そんな仕事から抜け出すべく主人公は投資家に転身するのだが、後半はヤクザ映画もどきになり、ちと残念。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    心躍った。マイケル・マンやN・W・レフンの如き語り口と撮影だがそれは小手先でなく、仁義ある半グレの誰にも知られぬ英雄性を描くオリジナルとして本作は大きく立つ。カタギでノすため三河島の焼肉屋で済州島からの不法入国者のツレを切れば後に前科者だと自分がITベンチャーに切られ、弟分の仇は激情から私的に果たす。その因果を山本一賢演じる主人公石神がきれいに過ごして、裏と表、内と外が繋がる。主人公のコハダの握りの食い方が良い時点で優れた映画の予感はした。

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