フタリノセカイの映画専門家レビュー一覧

フタリノセカイ

トランスジェンダーとその恋人の葛藤を描いたドラマ。保育園に勤める今野ユイと実家の弁当屋を手伝う小堀真也は、出会ってすぐに恋に落ちる。だが真也は、自分が“体は女性、心は男性”のトランスジェンダーだということをユイに打ち明けられずにいた。出演は「茜色に焼かれる」の片山友希、「ハニーレモンソーダ」の坂東龍汰。監督はぴあフィルムフェスティバル“PFF アワード 2011”で自伝的作品「僕らの未来」が審査員特別賞を受賞したトランスジェンダーの飯塚花笑。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    監督が元生徒なので添削モードでいくけど、せっかくトランスジェンダーという自らの性自認をやるのに、どうして相手の女性視点でやるのか。セックス未遂後にカミングアウトって、性自認以前に嘘が許せないのでは。旦那の慰謝料請求をなぜ黙っているのか。他の要素含めすべて物語動かすためのご都合でしかない。再会後初めてセックスする感じだけど、それまで何もなかったのか。カットバックばかりでまるでテレビのよう。描くべきものがあっても技術がないんじゃ何にもならない。勉強勉強。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    多様な性自認が社会に認められるようになるにつれ、壁の存在もまたくっきりとしてくる。トランスジェンダーとの事実婚をどう維持するか。子供をもつにはどんな方法があるか。試行錯誤する二人がぶちあたる壁を具体的に描き出したところが、この映画の手柄。そこに飯塚花笑監督自身の切実な生が反映しているから、劇的な緊張感も揺るがない。ただどうしても食い足りないのが、ユイが子供をもちたいという実感。この渇きをもっと深く丁寧に描いてほしかった。欲張りすぎだろうか。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    心よりも身体に重きを置く、日本の凝り固まった結婚制度に一石を投じる意図は痛いほど伝わるが、トランスジェンダーの概念のようなものの曖昧さや複雑さも浮き彫りにされた気がした。さんざん遠回りをしたふたりの苦渋の選択とはいえ、望んでも難しい子どもを授かる手段を第三の人物頼みにする展開は、不妊治療などに悩むひとには、少々ご都合主義に映りはしないか。外部にも心を配ってこそ、“フタリノセカイ”でしか築けない幸せのかけがえのなさが、一層際立つように思う。

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