プリンセス・ダイアナの映画専門家レビュー一覧

プリンセス・ダイアナ

没後25年、世界初となるダイアナ元妃の劇場版ドキュメンタリー。彼女の人生、そして悲劇的な死の真相が、サスペンスフルなタッチで綴られる。監督はアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートを果たした経験を持ち、Netflix『本当の僕を教えて』を手掛けたドキュメンタリー作家エド・パーキンズ。ダイアナが1981年にチャールズ皇太子と婚約する数週間前から、世界中が悲しみに暮れた突然の死までの16年間が、当時のニュース番組の映像やホームビデオなどのアーカイブ映像を繋ぎ合わせて語られる。すべてが生々しくスキャンダラスに、彼女をめぐる異常な熱狂の秘密が暴かれていく。映画は誰を擁護するでもなく、徹底して第三者の目から静観する形で時代を映し出していき、一つの問いを突き付ける。彼女を本当に“殺した”のは誰か?
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    フィクションではないため近年の知見を活かしてダイアナの人物像や王室観をアップデートするという方向をとることは出来ず、結果的にマスコミの過剰報道に殺されたと言ってよいであろうダイアナの悲劇を、再び当時のマスコミが垂れ流したゴシップ映像から再構成するという何がしたいのかわからない内容に。実際に今作に関心を持つ層とも重なるはずの、皇后雅子や小室圭のゴシップに触れて妄言を撒き散らしてきたヤフコメ民諸氏は、是非本作を観て皇室報道について考えてほしい。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    映画がはじまって十数分が経ったところ、チャールズとダイアナの結婚式の模様が映し出される場面で「おとぎ話は普通ここで終わります。“末永く幸せに暮らしました”といいう言葉と共に」とナレーションが言う。本作が描くのはそんな、おとぎ話が決して描かない、結婚後のダイアナ妃についてだ。加熱するマスコミ報道についての事柄が中心だが、王室という存在の意義や批判も語られていく。しかしなにより、ダイアナ妃の存在そのものが類い稀な被写体であることを実感させられる。

  • 文筆業

    八幡橙

    ナレーションもテロップも使用せず、何千時間から選りすぐった記録映像を時系列に沿って繋いだだけの構成がむしろ響く。夢のような結婚式の前後から加速する若き妃に注がれる過剰な視線、さらに夫婦を巡る極めて下世話な醜聞合戦にパパラッチの暴走……。マスコミを時に利用し、時に憎んだダイアナ自身と王室、またマスコミを糾弾しながら大衆紙や暴露本を買い漁る国民の功と罪、いずれの側面をもさりげなく突いてゆく。君主制とは何か、解けない謎を見つめるタイムリーな一本。

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