彼女はひとりの映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
また居場所のない孤独な女の子の話かと観ていたら、教師の父親と不倫して自殺した女子高生の幽霊が出てきて、襟を正す。不倫を主人公に告げた男子生徒も女教師と禁断愛中。そう来るか。性描写のないロマンポルノ。好き優しいの多用がウザいと思っていたら、最後の嫌いで大逆転。役者も皆いい。凡百の孤独ぶりっこ映画とは一線を画す。ベテランスタッフに恵まれることも才能のひとつ。願わくはバカな大人に潰されず、半径1メートルの外の世界にも目を向け、才能を伸ばしていってください。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
「落ちつくんだ」と諭す男たちに復讐していく女子高校生の物語。一見普通の少女は、ある幻影に追われてはいるけれど、狂っているのか、冷静なのか、最後までわからない。少女を中心に、脅迫の対象である幼馴染の同級生、そして父との関係を軸とした、いくつもの三角関係が構築され、その関係性のきしみがドラマの推進力となっている。すべてを画面で語り切ろうとする中川奈月監督の意志はすがすがしく、おそらく低予算であろう学生映画の画面に、異様な緊迫感をもたらしている。
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映画評論家
服部香穂里
いわゆる復讐劇は、する側、される側双方に救いのない展開が常だが、両者を隔てる境界ごとぶっ壊すことで、ある種の救済へと導く、異様な熱気みなぎる怪作。「本気のしるし」でも異彩を放った福永朱梨が、死の淵から期せず生還し、愛されたい願望を益々こじらせるモンスター予備軍にも見えかねぬ女子高生を、自身だけは彼女をすべて受け止めんとする覚悟で力演。期待の新鋭らと協同で、ぼっち娘の孤独という名の闇や狂気に肉迫し、しまいには共感さえ獲得してしまう離れ業をやってのけた。
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