Shariの映画専門家レビュー一覧

Shari

写真家の石川直樹が地元の写真愛好家たちとともに知床の新たな魅力を発信するプロジェクト(写真ゼロ番地知床)。そのゲストとして招かれたダンサー・振付家・映画作家の吉開菜央が監督した初長編作品。知床の斜里(しゃり)を舞台に摩訶不思議な“ほんとのはなし”が展開する。本作が初の映画撮影となった石川直樹は2020年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により、膨大な冒険とさまざまな土地での民俗学的記録、作家活動が評価され、日本写真協会賞作家賞を受賞している。一方、吉開菜央は短編映画「Grand Bouquet」がカンヌ国際映画祭監督週間 2019 に出品されたほか、米津玄師 MV『Lemon』の出演・振付でも注目を集めている。吉開は2019年夏、斜里町に滞在し、斜里岳を登り、野性の鹿肉を食べるなど人々の生活を垣間見た。その体験が映画の源泉になったという。出演は斜里町の人々、海、山、氷、赤いやつ。吉開自身が人と獣の間のような「赤いやつ」に扮し、温暖化による大きな変化が起きつつある北の地を彷徨い歩く。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    他の分野において(おそらくは)秀でたアーティストが、映画という表現フォーマットにさほどの思い入れのないまま、本業における自己評価の高さのまま無造作に乗り込んでしまった作品にありがちな、独りよがりさに途中から辟易としてしまった。ドキュメンタリーとしては監督自身によるナレーションが饒舌かつ主観的すぎて評価のしようがないので、映像による随筆のようなものと受け止めるしかない。知床に行ってみたいとは思ったので、観光映画としては一定の価値はあるのか。

  • 映画評論家

    北川れい子

    ドキュメンタリーというよりも、映像によるお洒落で気ままなポエトリー? 北海道、知床斜里。雪原を真っ赤な毛糸の着ぐるみ姿でゆっくり歩くのは、監督でもあるダンサーの吉開菜央だそうで、確かに画として効果的。この地のパン屋さんや漁師さんの日常などにもさりげなくカメラを向け、映像エッセイ風な趣も。むろん厳寒の斜里の無言の風景もふんだんに写し出されるが、どの映像もどのスケッチも、監督の個人的なアルバムでも見ているようで、いまいち?みどころがない。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    「ザッツ・ダンシング!」(85年)でジーン・ケリーは古代壁画や彫刻を示し、人類が古くから踊り、その姿を記録してきたと述べるが、そこにはダンサーが自己のアイデンティティから人類史を捉える凄みがあった。本作「Shari」にもその感じに似たものがある。身体表現のひとががっつり風土と組み合い、その土地と踊ることで生まれた稀有な映画。対象の固有性に依存せず拮抗する個性となった作品。パン屋さん、木彫りコレクション、子どもの大相撲、言い間違いの取り込みに感動する。

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