くじらびとの映画専門家レビュー一覧

くじらびと

    インドネシア・ラマレラ村の鯨の銛打ち漁師たちを撮影したドキュメンタリー。30年という長い時間をかけて彼らと信頼関係を築き、2017年から2019年までの3年間に撮影した映像を本作に結実。世界で初めてラマレラの鯨漁の空撮と水中撮影に成功した。監督は、「世界でいちばん美しい村」の石川梵。
    • 脚本家、映画監督

      井上淳一

      スゲエと観ながら何回口にしたことか。どうやってあんな映像を撮ったのか。30年にわたる取材の成果だと知る。しかも、このご時世に鯨漁。年10頭獲れれば村全体が生活出来る。鯨の命を奪うことへの畏れ。死にゆく鯨の目。映像ですべてを語ろうとする強い意志。自分に問わざるを得ない。この映画とどう向き合うのか。欲を言えば、物々交換だけでなく貨幣経済の浸透も見たかった。スマホやってる若者も。しかし、他の誰にも撮れない唯一無二の映画。五輪の弁当大量廃棄。現代人必見か。

    • 日本経済新聞編集委員

      古賀重樹

      小舟の舳先に立った男が巨大なクジラに飛びかかり、銛を突く。クジラも反撃し、舟に体当たりを食らわす。インドネシアの寒村で400年続くというクジラ漁に密着。小舟に同乗して撮った迫真の映像に加え、ドローンを駆使した空撮で舟とクジラの闘いをダイナミックにとらえる。「アラン」(34)以来の題材に、最新の撮影機器で迫るドキュメンタリーの現在形。村人たちによる獲物の解体作業も壮観で、人口1500人の村が年間10頭クジラを捕れば生きていけるという経済的側面を伝える。

    1 - 2件表示/全2件