華のスミカの映画専門家レビュー一覧

華のスミカ

    華僑四世の林隆太監督が、横浜中華街にある日本で最大規模の中国人コミュニティーの歴史を辿るドキュメンタリー。家族の過去に触れ横浜中華街と向き合う決心をした監督が、日中台の政治に翻弄された華僑の歴史を追い、横浜中華街の観光地ではない一面を映す。第12回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭グローバルビジョン招待作品。2021年8月21日より横浜シネマリンを皮切りに各地で上映。
    • 脚本家、映画監督

      井上淳一

      横浜中華街にも大陸派と台湾派がいて対立していたなんて、ちょっと考えれば分かることなのに本作を観るまで思い至らなかった。恥ずかしい。その証言集としてだけで価値がある。ただ痒いところに手が届かない。文化大革命や天安門事件、今の中国をどう思っているか、なぜ問わないのか。個人と国家の関係が見えるようで見えない。15歳で半分中国人だと知った監督自身のアイデンティティにも迫れていない。本作のラストをファーストシーンにした続篇に期待。まだ何も始まっていない。

    • 日本経済新聞編集委員

      古賀重樹

      横浜中華街の華僑社会における大陸派と台湾派の対立と和解の歴史を、華僑4世の監督が追ったドキュメンタリー。中華学校での教育方針を巡り両派が衝突した1952年の「学校事件」以降の流れを、父や伯父、その恩師やゆかりの人らへの取材を通して明らかにしていく。父の出自を知らぬまま育ち、文化大革命の実感ももてない30代の監督の青いながらも曇りのない眼差しが、複雑な問題の本質に迫る。中台関係の緊張が高まる今、華僑社会の成熟が物語るものはより深くより重い。

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