オキナワ サントスの映画専門家レビュー一覧

オキナワ サントス

第二次世界大戦中、ブラジルで起きた日系移民強制退去事件の真相に迫るドキュメンタリー。1943年7月、高まるナショナリズムを背景に、南東部の港町サントスで日系・ドイツ系移民に退去命令が下される。長らくタブーとされてきたこの事件の真相とは。監督は「花と兵隊」、「祭の馬」の松林要樹。
  • フリーライター

    須永貴子

    70年前の事件の実態と、なぜこの事件が公に語られずに歴史の闇に葬り去られたのかを明らかにする、二層構造が深みになっている。枢軸国側だった日本に対するヘイト本の存在や、移民内での沖縄の人への差別、日本の敗戦を認める移民と認めない移民との間での「勝ち負け抗争」など、現在の日本が抱える病巣に繋がる事柄ばかりで驚愕した。事件の当事者への取材を時系列で並べた構成は、やや薄味の印象。編集にもう少しのメリハリを、インタビュイーの発言にテロップを。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    第二次大戦下のブラジルでこんなことがあったとは!? 枢軸国でなおかつ中国を侵略していた日本はブラジルにとっては悪そのもので、サントスに住んでいた日系移民はスパイと見做され、強制退去させられる。その人たちの多くが沖縄からの移民なのだ。沖縄の民はなぜこんな目に遭うんだろう。日本では、本土防衛のための踏み台にされ、10万人以上の無辜の人々が殺された。にも拘わらず、サントス事件の当人やその末裔の人たちの顔の良さはなんだろう。こんな顔の日本の政治家は皆無だ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    戦時下でのブラジル日系移民の強制収容。ブラジルにおいてその事実が長らく隠蔽されてきた日伯の地政学の問題、その六割が沖縄人だったというその特殊性、また日系移民間にもあった沖縄差別。提起されている問題は複数あるが、そのどれに対しても踏み込もうとしない。そもそも監督がこの問題を追いかけてみようと思ったその動機、また取材を通じて知ったことから何を描こうと思ったのかその狙いが伝わってこない。思想=哲学を欠いていることが、事実の複雑さに迫れない根本原因。

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