すべてが変わった日の映画専門家レビュー一覧

すべてが変わった日

ダイアン・レイン、ケビン・コスナー共演で贈る、1960年代を舞台にした西部劇のテイストあふれるサイコスリラー。元保安官の夫とその妻は3年前に一人息子を亡くし、再婚して離れてしまった義理の娘と孫を探すが、再婚相手の男の家族は狂気に満ちていた……。ラリー・ワトソンの2013年の小説“Let Him Go”を原作に、ファッション業界出身の異色の映画監督、トーマス・ベズーチャが監督・脚本を務めた。共演は、強権的女家長役に「ファントム・スレッド」のレスリー・マンヴィル、義理の娘役を「プライベート・ライフ」のケイリー・カーターが演じたほか、ドラマ『バーン・ノーティス元スパイの逆襲』の主演として人気を博したジェフリー・ドノヴァン、ディズニー・チャンネルの大人気テレビ映画『ディセンダント』シリーズのブーブー・スチュワートらが脇を固めた。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    馬乗りにとって雷鳴がどれだけ危険かという説明もなく話がどんどん進行していく冒頭から、元保安官が一か八かの勝負に身を投じるラストまで、とても現代のアメリカ映画とは思えない作り手の高い志に貫かれたネオ西部劇。ネイティブ・アメリカンの描き方や、物語の決定権を握り続けるのが元保安官の妻というところに、「現在の映画」としての必然性もある。監督の過去のフィルモグラフィーがまったくあてにならないこういう映画に出合うことがあるから、映画は面白い。

  • ライター

    石村加奈

    原題も邦題も、観客の想像をかき立てるタイトルだ。60年代の設定だが、現代的なテーマをはらんだスリリングな展開が繰り広げられていく。暴れ馬を調教するように愛孫奪還劇を牽引するのはダイアン・レイン。姑然と嫁を邪険にしたり、男に気を遣わせる女と言われたり、一見厄介な女性が痛快な主人公に見えてくるから面白い。そのポイントを夫(ケヴィン・コスナー)の「ここで諦めるなよ」という愛の言葉と捉えれば、彼女は彼を手放していない? 実に面妖なラブストーリーではないか!

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    美しい朝焼けの中、牧場を馬が駆ける。それを見守る初老の男。往年のケヴィン・コスナー映画を思わせる完璧な冒頭。だが、本作は、ダイアン・レイン演じる孫を奪われた女の執念の物語だ。奪ったのは暴力で家族を支配し、他人までもコントロールしようとする、老女。演じるL・マンヴィルの眼差し、その滲み出るリアリティが怖すぎる。それぞれが正義と疑わない、価値観の違う“似た者同士”が親戚となって出会う悲劇はどこにでもあるが、その最悪パターンの行方にヒリヒリする。

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