ジュゼップ 戦場の画家の映画専門家レビュー一覧

ジュゼップ 戦場の画家

2020年カンヌ国際映画祭オフィシャル・セレクションに選出された長編アニメーション。スペイン内戦でフランスに避難し、強制収容所で難民となった実在の画家ジュゼップ・バルトリと、彼を援助するフランス人憲兵。有刺鉄線を越えた2人の友情の物語。フランスの全国紙『ル・モンド』などのイラストレーターとして活躍してきたオーレルが、10年の歳月を費やして完成させた長編アニメーション監督デビュー作。
  • 映画評論家

    小野寺系

    ゴッホの絵画作品風に世界を描いた「ゴッホ 最期の手紙」とは、また異なるかたちで、本作の登場人物であるアーティストの作品をアニメーションの中で使用し、現代のクリエイターとコラボレーションした趣向が新鮮。いたましい出来事だからこそ、それを絵にすることの意義や意味をも考えさせる。フランスからメキシコに舞台を移し、カラフルな色彩によって“線”が消えていく絵画的手法に迫ることで、ジュゼップの心理の変遷まで描いた点からは、彼の人生を真摯に考えた姿勢が伝わった。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    画家の伝記と、彼との友情を孫に語り聞かせる老人の思い出ばなしの豊穣さを兼備。監督オーレルが新聞などで活躍するイラストレーター/漫画家だけあって、このアニメからは主題以上の、作品全体にアーティストとしての二人の、感性の響き合いがにじむ。鉛筆による線描画のような人物と水彩画のような背景がなめらかに動く前半に対して、後半の色鮮やかな見せ方もうまい。孫に語る構成にしたことで物語を単なる歴史に終わらせず、現代へバトンを繋いだストーリーも評価したい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    実在した風刺画家、ジュゼップ・バルトリと語り部でもある憲兵の友情を軸に、スペインの内戦から逃れた難民たちがフランス政府によって強制収容所に入れられ虐待にあう、というなんとも皮肉でおぞましい歴史を荒々しい描線で綴った本作、陰鬱だが牧歌的でもある画が逆に悲惨な状況をよりリアルに脳内再生させる効果はあるのだが、地のアニメーションとジュゼップが描き続けた風刺画の雰囲気が寄りすぎており、彼の生涯とメッセージを描くにあたり、この手法は功罪あるように感じた。

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