場所はいつも旅先だったの映画専門家レビュー一覧

場所はいつも旅先だった

    雑誌『暮しの手帖』元編集長で文筆家や書店オーナーなど様々な顔を持つ松浦弥太郎が初監督したドキュメンタリー。アメリカ・サンフランシスコやスリランカのシギリアなど世界5ヶ国・6都市を巡り、旅先での出会いとかけがえのない日々を飾らない言葉で綴る。松浦弥太郎の自伝的エッセイ集『場所はいつも旅先だった』と同題ながら、映画オリジナルの内容になっている。脚本家・演出家の小林賢太郎が朗読を担当。
    • 脚本家、映画監督

      井上淳一

      世界ふれあい街歩き』とか『世界の車窓から』とかテレビと見紛う作り。飛行機の機内誌に書かれているようなナレーションが延々と。そこに新しい視点も切り口も批評性もない。何のために作ったの? 動くガイドブック? 仕事だから最後まで観たけど、映画館なら途中で出てる。いや、そもそも観に行かない。映画を作るならちゃんと映画を作って欲しい。配給宣伝、これをいいと思って売っているのか。映画館が可哀想。もう何年も底が抜けたと思ってきたが、底なし沼の底はなお暗く深い。

    • 日本経済新聞編集委員

      古賀重樹

      早朝と夜の町に人々の営みが表れるというのは本当にそうだし、いい旅だなあ、とうらやましく思う。サンフランシスコやスリランカや台湾の朝食も実にうまそうだ。でも、これって『名曲アルバム』や『世界の車窓から』とどう違うの? 映画館で80分も強制的にスクリーンに向き合わせて何を伝えたいの? 「不安と寂しさを愛してみる」とか「自分をリセットする」とか、気持ちはわかるけれど、そういうあなたは何者なの? 自分をさらけ出さない人の独白に付き合うのはつらい。

    • 映画評論家

      服部香穂里

      何かと悪者にされている“夜の街”の、世界各地のありふれた日常を見つめているだけで、目頭が熱くなる。ひとり旅や街歩きのすすめ的な側面ももつ作品と理解しつつ、ほぼ全篇、語られっぱなしのエッセイ風の朗読が、自我を抑制した耳なじみのよい小林賢太郎の声をもってしても、作り手の間だけで自己完結しているかのような印象を与えてしまう瞬間がある。映像や写真から自然とにじみ出てくる、異国情緒や旅行気分も味わってみたかっただけに、ちょっと残念に思った。

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