聖地Xの映画専門家レビュー一覧

聖地X

「シュシュシュの娘」の入江悠監督が韓国映画界と組み、劇団イキウメの舞台をオール韓国ロケで映画化したホラー。離婚を決意した要は兄・輝夫が住む韓国の別荘に身を寄せる。しかし二人は踏み込んだ者は奇妙な死を遂げると言われる聖地Xに入ってしまい……。「犬鳴村」はじめ数々のホラー作品を世に送り出してきた東映のプロデュースチームと、「22年目の告白 私が殺人犯です」のロボットが企画。「悪人伝」などを手がけてきた韓国の B.A.エンタテインメントがロボットと共同制作した。兄の山田輝夫を「さんかく窓の外側は夜」の岡田将生が、妹の東要を「九月の恋と出会うまで」の川口春奈が演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    どこに向かっていくのかまったく予想できない序盤こそ興奮させられたが、早い段階で尻すぼみに。同じ著者の原作映画化歴もある黒沢清作品を連想させる風や水のカットがこれ見よがしに何度も挿入されるが、そういうシグネチャー演出は監督に属するものであって、付け焼き刃な印象のみが残る。また、黒沢清の別作品では役者としての新しい領域を引き出されていた川口春奈が、本作ではテレビサイズの雑な所作や表情に終始していて、展開上不可欠な緊張感を吹き飛ばしてしまっている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    人間の願望を察知して、それを実体化する得体の知れない何か──。この作品を観た某監督が「惑星ソラリス」を連想したとおっしゃっていて、私も心して観たのだが、強いて言えば「惑星ソラリス」の地上版ふうドタバタパロディ。しかも舞台は韓国の海の近く、人物はほとんど日本人。確かに奇妙な現象が起こる。日本にいるはずの人間が、同時にこっちでうろうろしているのだから。更に韓国の土着的な呪い伝説まで盛り込み、心理学みたいな会話も。でも捨て難いのは映画の本気度!

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    SFミステリ、ホワイダニット、ハウダニット、ハプニングからのルール探し、というのはかなりいろんなことがやれると思う。「リング」、シャマラン映画、荒木飛呂彦漫画の面白さとはこういう系統。韓国でロケされているため、ある人物が過去を欠落させたり復活させたりしたうえで反省と謝罪してみせたりすることが日韓の歴史上の課題を連想させた。ゲーム好き人生の思いがけない活かしどころを得、さらにえらいことまでしそうになった岡田将生が成長することに劇を感じた。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事