189の映画専門家レビュー一覧

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実在の事件から着想を得て、児童虐待をテーマに描いたヒューマンドラマ。児童相談所の新米児童福祉司・坂本大河はある日、父親から虐待を受け、病院に搬送された6歳の少女・増田星羅と出会う。星羅を救うため、大河は弁護士の秋庭詩音と共に奔走するが……。出演は「ホーンテッド・キャンパス」の中山優馬、「夏への扉 ―キミのいる未来へ―」の夏菜。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    綿密なリサーチに基づいてこの困難な題材に取り組んではいるのだろう。しかし、いきなり観光映画のようなくだりが入ったり、叙情的なJポップ曲が流れたりと、ナラティブに深刻な破綻をきたしている。そして、その破綻の元凶である現在の平均的な日本映画の脆弱な製作体制でこの題材を扱うこと自体に、自分は否定的だ。子役に与える心理的影響を考えても、監督によほどの覚悟がなければ作るべきではないし、本作の演出の甘さや凡庸な着地からはそこまでの覚悟が感じられなかった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    実際に起こった痛ましい児童虐待事件を基にした社会派のサスペンスで、探偵役は関東地方の児童相談所の新人職員。いやサスペンスとか探偵などと書くと児童虐待に便乗した社会派気取り再現映画と誤解されかねないが、児童相談所の実情やその業務の限界にも踏み込んだ展開は、かなりしっかりしていて、いわゆるお役所仕事への批判も忘れない。ではあるが、親に虐待される子役たちの演技、演出があまりにリアルすぎて、余計なことだがこれも一種の虐待じゃない?と思ったりも。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    今年9月封切りの「君は永遠にそいつらより若い」(監督脚本吉野竜平)でも部分的な描写として児童虐待の察知と児童相談所の業務に劇的なものとアクションの契機が見出されていた。2019年の千葉県野田市の事件を題材にしたと思しき本作はこの主題を全面展開し、ほとんどホラー映画、ほぼ「呪怨」のプリクエル。フラットめの画面は普通煽り不足のマイナス評価要因と捉えるが本作では題材の陰惨さが強すぎてもはや煽る必要はなかった。現代的な題材の重要な実録映画の出現。

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