幕が下りたら会いましょうの映画専門家レビュー一覧

幕が下りたら会いましょう

SKE48元メンバーで「今日も嫌がらせ弁当」などに出演、作家としての顔も持つ松井玲奈が映画単独初主演した人間ドラマ。実家の美容室を手伝いながら劇団を主宰する売れない劇作家の麻奈美は、東京で働いていた妹・尚の死をきっかけに、過去と向き合っていく。監督は、「いつか輝いていた彼女は」の前田聖来。本作が商業監督デビュー作となる。また、脚本を前田聖来と「アストラル・アブノーマル鈴木さん」の大野大輔監督が手がけた。姉の麻奈美を松井玲奈が、妹の尚を「孤狼の血 LEVEL2」の筧美和子が、母・京子を「カメラを止めるな!」のしゅはまはるみが演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    主人公のどこに魅力を感じればいいのか最後までわからなかった。それは劇中での設定も同様。夢破れた劇団主宰者が、妹の死(その死因にも脱力)をきっかけに思い出作りのような最後の舞台に挑むのだが、無賃労働の劇団員が彼女についていく理由がさっぱりわからないし、デビュー作の裏側が明かされた後はなおさらだ。本来は表現をするような才能がない人間が表現の道を選んでしまった悲劇に、製作から押し付けられたJポップ曲の場違いな響きが重なって、一層物悲しい気持ちに。

  • 映画評論家

    北川れい子

    96年生まれで演技歴もあるという監督の長篇デビュー作で、聞けば普段は出版社で働いている由。才能とチャンスがあればいくらでも映画が撮れるんだと感心したが、正直、このデビュー作、ヒロインの周辺に週刊誌ネタふうの事件やエピソードをあれやこれや盛り込みすぎて、逆に散漫で?みどころがない。しかもこのヒロイン、逃げ腰の責任転化が目立つのもいただけない。脚本をもっとシンプルにして、妹をパワハラで死なせたりしなければ、ヒロインの劇作家になる夢も純化したのに。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    しゅはまはるみの老け役が良い。実際四十代なのだろうが、いまどきのひとプラス他人に見られる商売の常で三十代に見えるところを、つくって六十くらいの役をやることに、映画の面白さと役者根性と若けりゃいいという風潮へのアンチを感じた。松井玲奈と日高七海が同年配の他の女優らに埋没しない佇まいなのも良かった。筋立てもまあ分かるが、個々の状況と人物が投げ出されっぱなしで終わることと、流れる曲の合わなさには疑問。だからラーメンすする音で終わって良かった。

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