サンマデモクラシーの映画専門家レビュー一覧

サンマデモクラシー

1963年、アメリカ統治下の沖縄で民主主義を勝ち取ろうと奮闘した人々に迫るドキュメンタリー。サンマに関税がかかるのはおかしいと、魚屋の女将・玉城ウシが琉球政府を相手に裁判を起こすが、帝王と恐れられた高等弁務官ポール・W・キャラウェイが立ちはだかる。「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」に続く、沖縄テレビ放送製作による劇場版第2弾。ナレーションを沖縄出身のマルチタレント、川平慈英が担当。2021年7月3日より沖縄・桜坂劇場にて先行上映。
  • 映画評論家

    北川れい子

    日本復帰前の沖縄の人々にかけられていた無謀な物品税。その代表とも言えるサンマ税に異議を唱えた魚問屋の女将、ウシさんを追った裁判ドキュメンタリーだが、残念なことに、素材と資料等の情報不足で、実に中途半端な作品に。それをはフォローするためなのか、沖縄の噺家を使って笑い話に仕立てているのだが、それが逆にウシさんまでからかっているようにも見えなくもなくいささか本末転倒気味。当時の沖縄の実情にも触れているが、ザックリ感は否めない。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    沖縄のドキュメンタリーは数あれど、サンマの輸入関税をめぐる、いわゆる「サンマ裁判」を軸に据えたユニークな一作。落語の語りや再現劇、アニメーションなど、さまざまな意匠をぶち込みつつも視点が拡散しすぎていないのは、玉城ウシという人物に対する山里孫存監督の個人的興味が根っこにあるためだろう。沖縄においてさえ(あるいは沖縄であるがゆえに)政治と生活を分断させしめようとする日本的メディアの風潮のなかで、生活が政治を動かすことの意味を再考させられる。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    海辺にうちな~噺家・志ぃさーが登場して語りだす。微温的の一歩手前のその語り、そして似た調子の川平滋英のナレーションに乗って、さまざまな質の記録映像がつながれる。サンマ裁判の玉城ウシが目玉ではあるが、下里恵良と瀬長亀次郎という対照的な政治家も「主役」の一角。下里のところは、再現映像によるサイレント活動写真。沖縄の過去をめぐる「啓蒙」には、「啓蒙」で終わることの一般的な限界とは別なモヤモヤを感じることが多い。山里監督はドタバタでなんとか乗り切ったか。

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