東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパートの映画専門家レビュー一覧

東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート

1964年のオリンピック開発の一環として国立競技場に隣接する場所に建てられ、東京2020オリンピックに伴う再開発により取り壊された都営霞ヶ丘アパートの住民たちの最後の生活を記録したドキュメンタリー。五輪ファーストの陰で繰り返される排除の歴史を描く。監督は、ドキュメンタリー作品や美術の映像作品に携わり、本作が劇場作品初監督となる青山真也。音楽をNHK連続テレビ小説『あまちゃん』などを手がけてきた大友良英が手がける。東京ドキュメンタリー映画祭2020 特別賞受賞作品。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    誰かが映像として残さなくてはいけなかった題材を残してくれた。まだ青山近辺が華やかな遊び場だった頃(近年は特に夜になると閑散としていて、まったく別の街に変貌してしまった)に何度か迷い込んで、こんな地価が高いところにこんな団地があるんだと不思議に思っていたが、その謎も解けた。様々な事情を抱えている住人たちのプライバシーには必要以上に踏み込むことなく、その表情やちょっとしたボヤキで問題提起を促す、その抑制の効いたアプローチも支持したい。

  • 映画評論家

    北川れい子

    新国立競技場の建設で立ち退きを余儀なくされた都営アパートの住人たち。カメラの前にその生活ぶりを晒す住人の多くはかなり年配の独り暮らしで、中には前回の東京オリンピックのときの立ち退きでこのアパートに入居、また立ち退かざるを得ない人も。ナレーションを廃し、ここでの暮らしを諦めきれない人たちに寄り添うカメラはあくまでもやさしいが、ただ撮っているだけのような印象も。とはいえ本作、東京五輪の公式記録映画を撮る河瀨直美監督にはぜひ観てほしいと思う。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    今夏の東京五輪はまぎれもなく重要な問題から目を逸らさせるためのプロパガンダだった。目を逸らさず見なければならないものとは何か。この記録映像もそのひとつだ。脚光を浴びることのない日常の持続があることとそれが奪われること。コロナ禍というリトマス試験紙以前に(2014年から17年に撮影)五輪が反=人間的なもので、生活が自然と反五輪的なものとなることをあぶり出している。スポーツ観戦は好きだがこの夏は五輪中継、報道を見なかった。本作を観ることに替えた。

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