サマーフィルムにのっての映画専門家レビュー一覧

サマーフィルムにのって

元乃木坂46の伊藤万理華主演の青春映画。高校3年生のハダシは、勝新を敬愛する時代劇オタク。映画部で自分が望む時代劇を作れずに燻っていた彼女は、武士役にぴったりな凛太郎と出会ったことをきっかけに、個性的な仲間と共に映画制作に乗り出すが……。共演は「君が世界のはじまり」の金子大地。監督は「青葉家のテーブル」の松本壮史。
  • フリーライター

    須永貴子

    いろいろあっての体育館でのクライマックス。生徒たちが見守る中で、ハダシと凛太郎が剣に見立てた掃除道具をぶつけ合うそのやりとりは、肉体的接触はないけれど、誰にも割り込むことができない、紛れもないラブシーンだった。ハダシが映画監督になり、彼女が作った映画を凛太郎が受け取る未来までもを、ひと夏のストーリーから感じさせる、青春映画の大傑作。二人の体がクロスした瞬間を切り取ったラストショットの残像が、今でも脳裏にこびりついて離れない。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    映画愛に満ちた人には、やはり同業者として好感を持ってしまう。主人公のハダシが時代劇好きで、「座頭市」や「眠り狂四郎」や「椿三十郎」をこよなく愛しているのもいい。しかも彼女は勝新や三船の殺陣までしっかりマネできるのだ。実際、ラストの彼女の殺陣はグッとくる。が、あの撮影時の映画に対する取り組みの雑さはどうにも看過できない。ママゴトやごっこ以上の何物でもないと思ってしまう。それに、SF発想まで飛び込んでくると、もうついていけない気になってくる。

  • 映画評論家

    吉田広明

    作りごととはいえ撮影場面がでたらめだとか、当て馬たるキラキラ馬鹿恋愛映画に尺取られてメタ映画なのに映画内映画の内容がよく分からないとか(本来、映画内映画と本篇の二篇の映画を構想、それが対位法をなすことで本篇が奥行きをもって見えてくるよう作り込むべきだが、それをネグっているかに見える)疑念はあるが、時代劇の対決はラブシーンという映画の核の哲学には賛同するし、ラストの殺陣も悪くない。何より映画の記憶・体験から楽しそうに映画を作っている感じに好感。

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