君は永遠にそいつらより若いの映画専門家レビュー一覧

君は永遠にそいつらより若い

芥川賞作家・津村記久子のデビュー小説を「あかぼし」の吉野竜平監督・脚本、佐久間由衣、奈緒共演で映画化。大学生のホリガイが、卒業前の何気ない日常の中で、暴力や児童虐待、ネグレクトなどの社会の闇と、痛みや哀しみに直面し、人生を見つめる物語。「“隠れビッチ”やってました。」から2作目の主演作に挑んだ佐久間由衣が、悩みが多いわけでもないが、何かが自分に欠けていると感じている、大らかでとぼけたホリガイを味わい深く演じている。ホリガイの大学の1年後輩で、過去に痛ましい経験をもつイノギ役には、「みをつくし料理帖」などで注目される奈緒。そのほか、小日向星一、笠松将、葵揚、森田想ら注目の若手俳優が共演している。特に苦労することもなく児童福祉の職業に就職が決まった主人公が、人との出会いを機に自分の人生を認識する自己確立の物語であり、また日常にひそむ悪意と向き合ったとき、人はどのように行動するのかを問われる社会派映画の側面もある。第33回東京国際映画祭の「TOKYOプレミア2020」に選出された話題作。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    作中の「最近の若者像」が古くさく感じられるのは、原作が書かれた時期の反映だろうか? だとしたら、もっと大胆な脚色を施す必要があったように思う。また、幼少期に受けた理不尽な暴力、ネグレクト、DVなど、本作が扱っている問題は日本の社会でもさらにアクチュアリティを増しているものばかりだが、それらの多くはエピソードとして台詞で回収されるのみで、主軸はあくまでも現在を生きる主人公の成長物語であるという構造に、今作られる映画としての必然性を感じられなかった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    いまさら言うのも何だが、近年、凄く気になるのは、いじめや家庭内暴力、自殺、レイプなどを描いた作品が目立って多いこと。むろん扱い方は作品ごとに異なるし、現実社会の反映だと言われれば納得したりするのだが。一見、他愛ない大学生たちの群像劇ふうにスタートする本作も、主人公の周辺でそういった悲劇がいくつも起こる。けれども主人公の素直な感受性が映画を引っ張り、そのリアクションも説得力がある。作品のタイトルにもなっている台詞が、ズシンと胸にくる。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    フォーエバー・ヤングという語で鮮やかに「ラスト・ワルツ」のディランを思い出す。本来そのフレーズのどこにもないはずの死のイメージがやってくる。学生の頃、自分も含めて若い者ほど死にやすい感じは強く漂っていた。そういうのをよく表した原作、本作。魂の殺された部分と死者の側から永遠の若さを宣言する。純金のごとき哀切による負け惜しみに撃たれた。終盤、主人公のベランダぶら下がりと就職後の業務は活劇に接続する。遍在する謎と秘密に抗して。秋ミステリ番外篇。

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