MINAMATA-ミナマタ-の映画専門家レビュー一覧

MINAMATA-ミナマタ-

世界的写真家ユージン・スミスが遺した写真集を原案に、ジョニー・デップが製作・主演を兼任し映画化。1971年、熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと頼まれたユージンは、冷静にシャッターを切り続けるが……。共演は「モータルコンバット」の真田広之、「ミッドウェイ」の國村隼。音楽を「ラストエンペラー」の坂本龍一が担当する。
  • 映画評論家

    上島春彦

    記録写真史上に名高いあの水俣の母子の写真がどのように撮影されたかをめぐるドキュメント風フィクション。ここまできちんと演出された写真だったのも知らなかった。大画面で見られるのは貴重。フッテージに土本典昭作品も少し用いられている。歴史的団交の場でテーブルに座り込む交渉派リーダーの姿も有名なスミスの写真にあるが、あまりあれこれ「私も知ってる」などとはしゃがずに真っさらな目で見た方がいい。水俣訴訟というのは公害告発元年なんだというのが最後によく分かる。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    写真家の一人称を担うカメラは、独善的な眼差しが異国の地の人々へと開きゆく動勢を明示的に伴う。彼がファインダーを覗いて発する「美しい」なる言葉の危うさ。この主題にあって、意匠を凝らした洒脱な画作りと敢えて娯楽性をとる脚色による作劇が賛否分かれるのは無論想像に難くないが、フィクションの力を信じようと思わせる強度がある。ただこの物語の在り方であればタイトルは「MINAMATA」ではなくユージン(アイリーン)に焦点化させなければ整合性が取れないのでは。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    役者たちが素晴らしい。美波や加瀬亮は英語の訛りの齟齬こそあれ、キャリアベスト級の熱演を見せている。それでもここには水俣の海が写っていない。こうした題材をセルビアの「どこか」で撮ってしまうという意識の底には水俣が世界に数多ある公害問題のひとつにすぎないという意識が横たわっている。環境保護団体の大使もつとめるという本作の監督が持つべきだったのは環境問題への配慮以前に、眼前にたたずむ、安易な共感を許さない他者と向き合うための倫理だったのではないか。

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