犬部!の映画専門家レビュー一覧

犬部!

青森県の北里大学十和田キャンパスに実在した動物保護サークル「犬部」。その設立を担った獣医学部生をモデルに仲間たちとの奮闘を描く愛と命の青春物語。熱血主人公が仲間たちと動物を守ろうと奔走する過去と、獣医師となって新たな問題に立ち向かう現代で構成される。原案は片野ゆか著『北里大学獣医学部 犬部!』(ポプラ社刊)。超が付くほどの動物好きで、一匹でも多くの命を救おうとする熱血主人公・花井颯太を演じるのは林遣都。その相棒で心優しい同級生・柴崎涼介に扮するのは中川大志。監督は「花戦さ」「影踏み」などで心の機微を繊細に描き、また「起終点駅 ターミナル」や「プリンシパル~恋する私はヒロインですか?」などで北海道の景色を映画に焼き付けてきた篠原哲雄。さらに、動物ドキュメンタリーの名手・山田あかねが脚本を手掛け、保護犬・保護猫をめぐるリアルな問題や課題が丁寧に物語に織り込まれている。
  • フリーライター

    須永貴子

    一人でも多くの人に届けられるべきメッセージやテーマを込めた物語を、人気と実力と影響力のある俳優を起用して制作した、真っ向勝負の映画。愛犬との死別や、「犬は健気」といった人間本位のキャラ設定など、観客を泣かせるための下品な装置は一つもない。理想主義で暴走気味の主人公を、見守り癒やす愛犬“ハナコ”役を、「さくら」のちえが相変わらずの涼しい顔で、しれっと名演。難癖をつけるとしたら、動物に目を奪われてしまい、人間の芝居に目が行かないことくらいかも。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    犬や猫の映画がやたらに作られていた10年ほど前、この「犬部!」の映画化の話が持ち上がっていたが、実現とはならず、今陽の目を見るに至った。僕の子供の頃は、町に野良犬がうろついていて、時々交尾などして悪ガキたちに石をぶつけられたりしていた。それが今やペットロスなどという言葉が出てくるほど大切な存在になった。が、一方で捨てられる犬は殺処分されてしまう。気の毒な犬がこれでもかと出てくる。犬好きにはたまらないだろう。が、そうでもない人はどう観たらいいのか。

  • 映画評論家

    吉田広明

    救える命はすべて救うことを目標とする獣医師と、殺処分ゼロを目指して保健所に入った二人の「犬部」創設者。前者の現在を中心に話は進み、時折差し挟まれるフラッシュバックが、彼が現在かくあるのは何故かを効果的に描き出す一方、後者の音信不通が不穏な通奏低音としてサスペンスを醸し出す。題名の印象を裏切るシリアスな内容だが、多頭飼育崩壊を引き起こしたペットショップ店主も含め、声高に人を責めず、静かに人を反省に導く姿勢が、映画を後味の良いものにしている。

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