トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャングの映画専門家レビュー一覧

トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング

かつてミック・ジャガーが「太陽の果てに青春を」で、故ヒース・レジャーが「ケリー・ザ・ギャング」で演じたオーストラリアの伝説の義賊ネッド・ケリーの生涯を、「1917 命をかけた伝令」のジョージ・マッケイ主演で描くパンク精神あふれる反逆ムービー。豪アカデミー賞12部門のうち主要3部門で受賞、カルト・ムービーの巨匠ジョン・ウォーターズ監督が“2020映画ベスト10”に選出。1855年にアイルランド移民の長男として生まれたネッド・ケリーは窃盗や強盗を繰り返した無法者だが、現代でもオーストラリアに「ケリーのように勇敢に(as game as Ned Kelly)」という表現があるほど英雄として人気が高い。本作ではそんなネッド・ケリーを、悲惨な境遇から抜け出そうと苦悩し、怒り闘うひとりの若者として捉えたピーター・ケアリーのブッカー賞(イギリス最高の文学賞)受賞小説を原作に映画化。腐敗した権力に屈することを拒否し、兄弟や仲間たちと“ケリー・ギャング”を結成、国中にその名を轟かす反逆者となったネッドの姿を壮絶に描き出している。母親がネッドを売り渡すブッシュレンジャー(盗賊)のハリー・パワーにラッセル・クロウ、ネッドに屈折した想いを寄せ執拗に追い詰める警官のフィッツパトリックにニコラス・ホルト、ネッドの家族に横暴を尽くすオニール巡査部長にチャーリー・ハナムと豪華キャストが結集。「アサシン クリード」でハリウッドに進出したジャスティン・カーゼル監督が新たな伝説を誕生させた。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    伝説の犯罪者を題材としたよくある露悪的な一代記だろうと予想していたら、家族の負の連鎖から、オーストラリアという国の特異な成り立ちまでをも射程に収めた、とても生真面目な力作で不意を突かれた。ただ、「ジェシー・ジェームズの暗殺」もそうだったように、この種の作品は主人公に悲劇的なエンディングが待っていることがあらかじめ決まっている上に、対象への最低限の知見や関心があることを前提としているので、観客を選ぶ作品であることは否めない。

  • ライター

    石村加奈

    01年のブッカー賞に輝いた、ピーター・ケアリーの原作に忠実に、伝説の英雄ネッド・ケリーの物語が描かれる。本作のケリーは、幼い頃から父に代わって、母と姉弟妹を養うため、無骨な(それはまさに四角い黒の鉄兜のような!)男の仮面の下に、母エレンの愛を乞う、少年の純粋さを隠している(ジョージ・マッケイが、繊細に表現する)。原作に、きれいな母について、神が父のために仕掛けた罠とあったが、母親の存在感が強調されて、ヒーローの新たな像に迫っていく感動が薄れた感も。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    英雄譚として長年語られてきたオーストラリアの伝説の反逆者、ネッド・ケリーの生き様。本作は「トゥルー・ヒストリー」というシニカルなタイトル通り、その「真実」を否定し、同時に肯定する。“自分視点”の事実を子供に伝えるために綴ったネッドの手紙がモノローグとして物語を進めるのだが、実際のその手紙を基に小説は書かれ、それがこの映画の原作となっている。その「真実と虚構」をめぐる多重の入れ子構造が本作の魅力だ。クライマックスの美しく凄惨な光景が忘れられない。

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