ボディ・リメンバーの映画専門家レビュー一覧

ボディ・リメンバー

「あの日々の話」の俳優・山科圭太がメガホンを取ったサスペンス。小説家のハルヒコは従姉のヨウコと夫アキラ、友人でヨウコの愛人でもあるジロウをモデルに小説を書き始めるが、ヨウコにのめりこみ、やがて現実と夢、小説の世界までもが混ざり合っていく。シアター・カンパニー『マレビト会』の田中夢、劇団『青年団』の団員でユニット・古屋と奥田としても活動する奥田洋平と古屋隆太、「恋とさよならとハワイ」など映画や舞台に出演する鮎川桃果ら、山科圭太が活動の中で出会った才能を送り出すべく本作を企画。第23回サンフランシスコ・インディペンデント映画祭選出。
  • フリーライター

    須永貴子

    「異色サスペンスの傑作」という宣伝文句は風呂敷を広げすぎだろう。一本の小説を軸に、事実とフィクションが境界線を行き来して、ラストで驚かせるという狙いと意欲はわかる。しかし、この作品の中で小説のネタとなるエピソードが弱く、それを基にした小説の文章もクオリティが低い。ポスプロの問題なのか、聴き取れないセリフや、暗すぎて読み取れない画が多く、映画体験としてストレスフルだった。劇中の小説家に頭でっかちな御託を代弁させる前に、まずは基礎を大切に。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    何がやりたかったんだろう。男と女の三角関係のもつれ? 虚と実との微妙な間合い? 嫌らしいことを承知であえて伊丹万作を引用する。「テーマを絞れ。ストーリーは形ある短いものにせよ。人物は彫れるだけ彫れ」。則して言えば、テーマが何かわからず、ストーリーは迷走し、人物はただのデッサン。大の男二人をのめり込ませるヨーコにいったいどんな魅力があるのだろう。解放の70年代には、「ビッチ」な女性がよく出てきたが、彼女たちの心の奥まで映画は見せくれた。

  • 映画評論家

    吉田広明

    小説家が従妹から聞いた話を小説にするが、その話は嘘か本当か曖昧、さらに小説家の想像、従妹の話を疑う小説家の彼女の妄想も入り交じり全てが虚実皮膜の境に、との狙いは分かるが、話、想像、妄想、どれも真か偽かで世界の見え方が180度変わるほどの深みはなし、本当にも幻想にも見えるだけの語りの技量は愚か熱量にも欠け、加えて小説家が、嘘でも本当でも、そこに感じられる感情こそ大事と(映画作家のものでもあろう)創作理念を声高に語りだすに至っては、観客は鼻白むのみだ。

1 - 3件表示/全3件