太陽と踊らせての映画専門家レビュー一覧

太陽と踊らせて

    パーティアイランドとして知られる地中海に浮かぶイビサ島で、25年間ジャンルレスのバレアリックミュージックを紡いでいるDJジョン・サ・トリンサを取り上げるドキュメンタリー。自由で垣根のない彼の生き方を、島の映像とバレリアックな音楽にのせ映し出す。物語と色彩に溢れる彼の音楽に衝撃を受けた台南生まれ新宿歌舞伎町育ちの映像作家リリー・リナエが、3年間をかけて本作を完成させた。
    • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

      ヴィヴィアン佐藤

      イビザといえばパーティ三昧のイメージであるが、このDJジョンはオールジャンルでチルアウト系。イビザのスターDJたちとは対極の存在。かつてロンドンでカメラマンをしていて、D・ボウイなども撮影していたというジョン。ドローンを駆使した撮影は、まるで『スペース・オディティ』のトム少佐がイビザという星に不時着したような映像だ。そしてDJブースは小さな宇宙船で、サウンドは我々管制塔へ届ける信号だ。P・ゴーギャンやP・ボウルズなど西洋文明から逃れる轍を見る。

    • フリーライター

      藤木TDC

      80年代以降レイヴの聖地になったイビサ島の特異なクラブミュージック発達史は本作を見ても分からない。尖った感じでもない老DJの回想や知人らしき人の証言は具体性に欠け、権利が取れなかったかエポックな曲やパーティ映像も少ない。ドラッグについて言及が皆無なのはPに日本人がいて日本語クラウドファンディングで製作費が募られたせい? 関連ブログに「世界のビーチで上映する映画」とコピー。劇場でじっと見る目的の作品ではないようだし、特定のクラブの宣伝に思える。

    • 映画評論家

      真魚八重子

      ある程度の水準の作品ばかり観ているとつい忘れてしまうが、ドキュメンタリーのリテラシーにも初歩的なものがある。身近な人を取り上げるにしても、その人物が一本の映画を作るに足る興味深い人物か、もしくは普遍的な問題提起などがあるかという点だ。自分にとって驚異的に心地よい場所でも、カメラでその感覚を写し取るか、またはなんらかの演出でそれを抽出しなければならない。本作は被写体がさほど珍しい人物に見えず、DJとして音楽史に残るふうでもなく見応えがない。

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