マイ・ダディの映画専門家レビュー一覧

マイ・ダディ

映像作家の金井純一が2016年の映像クリエイター支援プログラム「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」 の準グランプリを受賞した作品を自ら映画化。今年45歳を迎えるムロツヨシが、満を持して映画初主演をつとめ、愛する娘を救おうと奔走するお人好しで誠実な父親を演じる。幼い頃に母を亡くし、父とふたりで仲睦まじく暮らす最中、突然の病気を宣告される中学生の娘役には期待の新星・中田乃愛(なかだのあ)。第8回「東宝シンデレラ」オーディションのファイナリストであり、2019年公開の映画「WE ARE LITTLE ZOMBIES」にて女優デビューした中田は、今作が映画出演2作目となる。多感な思春期ゆえに、父親の小言にうんざりしたり、微妙な距離を感じる一方で、やはり父や母のことをずっと愛している少女を演じている。ムロツヨシの父親は、はにかんだり、微笑んだり、悩んだり、怒りをぶつけたり、殴られたり、涙を流したりと、とにかく多様な表情・表現を見せる。25年間の役者人生で抱えてきた全てを出し切る、俳優ムロツヨシの新たな魅力に注目だ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    公共の場で不愉快な騒音を垂れ流しても平然と生きていられるストリートミュージシャンがクズ野郎なのはわかるとして、主人公の設定が牧師である理由が最後までわからなかった。鈍感なお人好しと、キリスト教の慈愛の精神は異なる。また、新しい才能を発掘するのが目的のコンペティション(過去の受賞作には野心作もあった)で、大手映画会社がこれまで散々粗製濫造してきた難病ものをわざわざ選ぶ必要があったのだろうか? 若手俳優たちの好演に★一つオマケして。

  • 映画評論家

    北川れい子

    日本映画には牧師が滅多に登場しないからだろうが、ムロツヨシの牧師姿、彼なりに役を演じているのはわかるが、どうも長めのコントでも観ているよう。シングルファーザーでもある牧師は、ガソリンスタンドでバイトをしていて、こちらは自然。そんな主人公の娘が白血病になったことから、ある事実を知るのだが、別に主人公を牧師にしなくても成立する親子愛の話だけに、違和感が残る。やたらにムロツヨシのアップが多いのも気になり、彼が口にする神様の教えも、空念仏に聞こえたり。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    ムロツヨシ氏の顔の美しさ。流行イケメンとは違う高橋貞二やリシ・カプール的な若干ふっくらの旧世代美男の系列。演じるキャラの柔和さ優しさを保証。その泣き顔だけでも勝負できるのに加え、時制を感情に準じて混交させる仕掛けがある。ムロと共に泣け。毎熊克哉の最低男ぶり最高。宗教者と生さぬ仲の子、で「極楽坊主 女悦説法」(72年/監督林功)を連想。軽い艶笑喜劇だが主役平凡太郎が拾った子を、わしゃ生臭坊主これは隠し子、と周囲に語って育てたのに結構感動した記憶が。

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