テスラ エジソンが恐れた天才の映画専門家レビュー一覧

テスラ エジソンが恐れた天才

天才発明家ニコラ・テスラの生涯を描く伝記ドラマ。1884年。憧れのエジソンの下で働き始めたテスラだが、やがて直流か交流かで対立し、訣別。独立したテスラは、実業家ウェスティングハウスと手を組み、シカゴ万国博覧会でエジソンを叩きのめすが……。出演は「真実」のイーサン・ホーク、『ツイン・ピークス The Return』のカイル・マクラクラン。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「不遇の天才」という題材に多くのクリエイターが惹かれるのは、その「不遇」の部分に自身の境遇を重ねるからだろう。しかし、残念ながらほとんどのクリエイターはニコラ・テスラのような天才ではない。これまでも頻繁に映像作品で取り上げられてきたテスラだが、本作にバイオグラフィー的な役割を期待していると痛い目に遭う。シリアスで重々しいトーンの中に突然挿入される、素っ頓狂な現代的モチーフ。そのアプローチを全面的に否定はしないが、終盤のあるシーンで心が死んだ。

  • ライター

    石村加奈

    ニコラ・テスラと言えば、エジソンとの電流戦争の好敵手として知られるが、本作では重要ではない。エジソンとのあれこれは、アイスクリームやパイを使った甘い空想でお茶を濁される。想像を裏切る、大胆な物語はやがて、テスラがTears For Fearsの〈Everybody Wants to Rule the World〉を歌うシーンへと辿り着く。イーサン・ホークの歌声は、ほろ苦いというより、はかなく切ない。監督が、ホークと2本のシェイクスピア映画を撮ったマイケル・アルメレイダと知って、大いに納得。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    “交流電力の父”テスラの実録映画だが、随所に実験的な演出が目立つ。エジソンが発明ビジネスに邁進していくのと対極にテスラは不器用な芸術家然としていて、彼の発想の先に現代のネット社会もあることが描かれるのだが、それらを反映させたその演出(19世紀に生きる語り部がネットの情報を参考にしたり、書き割りを背景にした虚実ないまぜの回想を挟んだり)は、全篇いまいちハマっていない印象。ホークとマクラクランの派手さがない好演がそのズレた軸を戻し、作品を救っている。

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