夜明け前のうた 消された沖縄の障害者の映画専門家レビュー一覧

夜明け前のうた 消された沖縄の障害者

1900年制定の法律に基づき精神障害者を小屋などに隔離したかつての国家制度・私宅監置について取り上げるドキュメンタリー。1950年に本土で禁止になったものの沖縄では本土復帰まで残存。精神障害者を犠牲に地域社会の安寧を保とうとしてきた歴史と向き合う。監督は、第54回ギャラクシー賞優秀賞を受賞した『Born Again~画家 正子・R・サマーズの人生』など、沖縄を拠点に数々のドキュメンタリー番組の企画制作をしてきたフリーTVディレクターの原義和。
  • 映画評論家

    北川れい子

    かつて精神障害者を人目に触れないように隔離した事実は、沖縄だけでなく日本中に多くあったことだが、不勉強で今回初めて、“私宅監置”なる法的制度があったことを知り、改めて胸を突かれた。自宅の片隅に粗末な小屋やコンクリートの建物を作り、障碍者を押し込めていたいくつもの事例。このドキュメンタリーでは沖縄の障碍者に光を当ててその闇の歴史を語り、中でもその現場写真は痛ましくも説得力がある。ただ、サブタイトルで“沖縄”を特化していることにはチト疑問が。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    精神病者をめぐる私宅監置の歴史に切り込んだドキュメンタリーとしては、少しまえに今井友樹監督の「夜明け前」があった。見えにくいものの「見えにくさ」を生み出した原因はいったいなにか。それを描き出すために、容易には見えないこと自体を表現に昇華した今井作に対して、この映画は創作舞踏を駆使し、記憶の身体化を試みる。言葉と身体をとおして「消された」人々の存在がまざまざと再生されていくさまに胸をつかまれた。饒舌すぎるナレーションと音楽の使い方には疑問が残る。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    人々が知るべき事実。一九七二年まで続いた沖縄での精神病者の「私宅監置」。原監督が名分的な正義以上のものに突き動かされてきたのはわかる。人類への根源的な問いに向かおうとしているし、そういう成長を人に促す題材でもあるだろうが、ここでの表現方法には手抜かりを感じる。曖昧な主観の入り込むイメージ表現や撮影する自分の影を出す前に、事実そのものとその歴史的背景、そして現在との関わりをもっと探ってほしかった。カメラの位置に工夫がない。アフリカは要らなかった。

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