二重のまち 交代地のうたを編むの映画専門家レビュー一覧

二重のまち 交代地のうたを編む

東日本大震災後のボランティアをきっかけに活動を始めたアーティスト「小森はるか+瀬尾夏美」のプロジェクトから生まれたドキュメンタリー。陸前高田を拠点とするワークショップに集まった初対面の4人の若者たちの姿を、映像作家の小森はるかが写し取った。
  • 映画評論家

    北川れい子

    ちょっと私事になるが、東日本大震災から5年後、被害甚大の三陸周辺を友人と旅したことがある。タクシーで大震災の傷あとや復旧工事の現場を回ったのだが、どの運転手の方も、震災時の体験を語るよりも、ここはこうだった、ここにナニがあったと、震災前の土地の風景やその日常を語り、それが凄く印象的だった。本作の若い訪問者4人(とても感じがいい)が、地元の方々から聞く話も、そこで暮らしていた人々の営みで、まさに過去と現在の風景が二重写しとなって心に迫る。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    あの震災を受けて、大文字のメディアは、連帯すること、結束することこそが、大事を乗り越えるためになにより必要であるとさかんに喧伝した。しかし、そのように容易くわかり合ってみせることが、一方で「わかり合えないこと」の尊さから目を背けさせはしないだろうか。この映画は、震災という事実を媒介として、事実を共有することと思いを共有することがいかに本質的に異なるかを徹底的に映し出す。そのわかり合えなさに、もしかしたら人間の美しさがあるのかもしれない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    3・11からの時間に対して何をすべきか。ちゃんと考えていると思った。「空に聞く」でコンパクトに当事者のいまに寄りそった小森はるかと、ジャンルをこえていま書くべきことを見出す瀬尾夏美のコンビの、画と言葉。押し合っても大丈夫という立ち方が双方にある。当事者ではない四人が当事者から受けとったものをどう伝えるか。被災地に出入りした表現者の多くとはちがう質の持続から生まれた発想であり、発見がある。おいしそうな食卓を囲む家族を見ただけでもうれしくなった。

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