生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事の映画専門家レビュー一覧

生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事

「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」の佐古忠彦監督が、知られざる沖縄戦中史に切り込んだドキュメンタリー。1945年1月、沖縄県知事を受諾した島田叡。玉砕こそ美徳という考えに抗い一人でも多くの命を救おうと力を尽くした男の生涯に迫る。ナレーションは「はりぼて」の山根基世、「かぞくのくに」の津嘉山正種、「嘘八百」シリーズの佐々木蔵之介。2021年3月6日より沖縄 桜坂劇場にて先行公開。
  • フリーライター

    須永貴子

    佐々木蔵之介が、解説や説明をするナレーションではなく、映像や音声が残っていない島田の「声」を担っているのが面白い。佐々木の声で語られるのは、島田が手紙などに残した文章や、他者の手記や日記に綴られた島田の発言。島田のポートレートを繰り返し映すことで、容貌の違う役者が演じるよりも、島田の本質が伝わる効果を生んでいた。力作だが、島田叡という人物を通しての現政権への問題提起としても、狂った日本社会を「生きろ」というメッセージとしても、回りくどい。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    日本には奴隷制がなかったと自慢気に語る人がいるが、沖縄戦の様相を見ると、日本という国が国民を奴隷以下に扱っていたことがよくわかる。「日本軍は国は守っても国民は守らない」。国民がいてこその国なのに、それを捨て駒扱いするということは愛国心の欠如と言うしかない。こんな考え方を国ぐるみで平然としてきた戦前日本は世界でも稀な異常な国だったのだろう。至極まともで健全だった県知事・島田叡と無辜の沖縄県民が無残な死に至ったのは、あの日本にあっては必然だったか。

  • 映画評論家

    吉田広明

    「軍民官一体」の標語の下、本土以上に徹底した形で総力戦を強いられた沖縄で、県知事の立場にあり軍と板挟みになりながら沖縄県民を極力守ろうとした島田の姿を軸に、国を守っても民衆は守らない、本土防衛の砦として沖縄を利用した日本という国家の姿が明らかにされる。本土の人間として、沖縄県民の幸福を願った島田のあり様は、沖縄を考える我々自身のひな形とも見なしうる、というかそうすべき。文書や証言を渉猟しているが、内容に比して若干長い。もう少しコンパクトで良い。

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