Eggs 選ばれたい私たちの映画専門家レビュー一覧

Eggs 選ばれたい私たち

エッグドナー(卵子提供者)をテーマにした、川崎僚監督による長編デビュー作。独身主義者の純子と、レズビアンの葵。ひょんなことから同居生活を始めた2人は、社会から求められる女性像と実像のずれに悩みながらも、それでも母になりたいと願うのだが……。出演は『真夏の夢』の寺坂光恵、「いたくても いたくても」の川合空。
  • 映画評論家

    北川れい子

    女は女性“性”を背負って生きる。男は男性“性”をブラ下げて生きる。って誰かが言っていたような―。ま、それはともかく、生む性としての女の月月の生理を、ここまで厄介なお荷物として描いた作品は記憶にない。結婚、出産は無縁と思っている従姉妹同士が、そのお荷物を、心情的かつ実利的に有効利用しようとする話で、結果として二人の世界はそれぞれに広がっていくのだが、何やら一人相撲を二人分観ている気も。そもそも“選ばれたい”という受け身のタイトルも気に食わない。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    以前、身近でエッグドナーの話を聞いたことがあるが、日本国内ではたとえドナー登録がおこなえたとしても、卵子提供には高いハードルがあり、希望者の多くが海外に行かねばならないという。つまり、需要と供給の関係が成り立っていないのだ。その前提に立ってみると、「選ばれたい」と願う女性たちを「選ぶ」主体はいったい誰なのかという疑問がわいてくる。「裏アカ」もそうだが、承認を求める心の隙間に入り込み、搾取しようとする社会の側にじつは最大の闇が隠されている。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    子供のいない夫婦への卵子提供。出産しない女性がそれで生物学上の義務を果たすという感じ方を本作で知った。冒頭、ドキュメンタリー的に何人もの提供志願者が語るが、それぞれの人間的魅力が見えない。ドラマ部分にもその感じがある。従姉妹である二人の話。二人の生き方も、直面する現実も、一種の弁解のためだけにそうなっていると思わされた。川崎監督、二人の心が接近したあとの溝、といった常套に頼って意欲を上すべりさせる。とくに赤ワインや鶏卵を使ったイメージ操作は幼稚。

1 - 3件表示/全3件